『その他大勢から抜け出す成功法則』

賢人に学ぶ
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リーダーシップ論の権威

今回は、アメリカで最も信頼されている「リーダーシップ論」の権威でもあるジョン・C・マクスウェル氏の著作『その他大勢から抜け出す成功法則 ~「何か必ずやる人」11の考える習慣術 』を取り上げたい。マックスウェル氏は学者でも経営コンサルタントでもなく、なんと牧師さんだ。ビジネスマンの能力開発を手がける米国企業「インジョイ・グループ」の創設者という顔も持つ。牧師さんなので、自己啓発のガイドがうまくないはずがない。

マックスウェル氏の著作は非常に数多く、米国では数百万部が売れたとされている。日本ではその半分程度が邦訳されており、今回の本はそのうちの一冊だ。

マックスウェル氏によれば、成功している人と、そうでない人との違いは、「考える習慣」の違いにあり、成功している人は、例外なく「プラス思考のパワー」を人生に活かしている。敗者は「生き残り」を考え、勝者は「前進」だけを考えるのだ。

成功思考を習慣にすれば、何かが変わる。考え方ひとつで、人生が変わるのであり、そのために、考え方の習慣から変えることをマックスウェル氏は勧める。この本で著者は、成功者の思考方法が必ず身につく方法として、11の考える習慣をあげる。それぞれの説明を読んでいくうちに、「何を考えるか」ではなく、「いかに考えるか」が大切であることを理解できるはずだという。

優れた思考法を身につけるには、常識や俗説に流されない心構えが必要になる。常識的な考え方を疑問視することである。それは創造性を高めることだとマックスウェル氏は言う。創造性とは、皆と同じものを見ていながら、誰も思いもしなかったことを考えつく才能であり、他の誰とも違う成果を上げることができる。

本書の訳者は、ベストセラー『声に出して読みたい日本語』著者で明治大学文学部教授の齋藤孝氏で、最後に解説も書いている。

考える習慣を変える

どんな「考え方」を習慣にするかで、あなたの人生には天と地ほどの差が生じる。自分の人生を変えたいならば、考え方の習慣そのものを変えればいいのである。稚拙で視野の狭いこれまでの思考法を捨て去り、「成功思考」をマスターする努力を惜しんではいけない。

成功思考を習慣にすれば、生き残りや現状維持に汲々とするだけの人生から脱却し、いまよりもっと大きな人生を手にすることができる。成功者に共通するのは「気持ちの切り替え」がうまいことである。自分のレベルをもう一段上げる「考える習慣」を身につけよう。

成功するための思考法として、多くの成功者に共通する思考習慣を調べ、次の11の思考スキルにまとめた(これを見れば、大体の見当はつく)。

  • 大局的に考える習慣:「大きな視点」でものごとを見よ
  • 集中的に考える習慣:エネルギーを注ぐ対象を厳選せよ
  • 創造的に考える習慣:「クリエイティブな自分」を楽しめ
  • 現実的に考える習慣:現実を客観的にとらえよ
  • 戦略的に考える習慣:作戦を立ててからことに当たれ
  • 前向きに考える習慣:何ごとも「前向き」に考えよ
  • 反省して考える習慣:経験から教訓を引き出せ
  • 「非・常識」に考える習慣:常識を疑ってかかれ
  • 「アイデアを共有」して考える習慣:人の頭を使え
  • 利他的に考える習慣:「独りよがり」を捨てよ
  • 実利的に考える習慣:目的と成果を明確にせよ

20代半ばの若いビジネスマンが、あるセミナーで講演していた元ゼネラル・エレクトリック社(GE)会長ジャック・ウェルチ氏に、「私ぐらいの年のとき、同僚に差をつけるためにあなたは何をしたのですか」と質問した。その質問に、ウェルチ氏は、「その他大勢」から抜け出すことの重要性を指摘した後、次のように語った。

「上司から質問されたり、簡単なプロジェクトをまかされたり、データ収集を頼まれたりしたとき、どういう答えがほしいか、上司はすでに分かっている。実は、上司は自分が正しいと思っていることを部下に正しいと確認してほしいだけなのだ。ほとんどの人は、上司が期待するような答えしか言わない。

しかし、その質問を足がかりにして、もっといろいろなアイデアを出す人もいる。上司の頭の中にある一連のアイデアに付加価値を与えてやる。質問の答えを出すだけでなく、たぶん上司が思いつきもしなかったアイデアや意見を3つ、4つ披露する。質問は、単なる出発点にすぎない。この原則を理解していれば、重要な仕事をまかされるようになる」

創造性とは、皆と同じものを見ていながら、誰も思いもしなかったことを考えつく才能である。創造性があれば、他の誰とも違う成果を上げられる。創造性は、革新と新しい価値をもたらす。

たいていの人は、自分が無意識のうちに持っている枠からはみ出ないようにしている。自分が設定している枠の線が、たとえ時代遅れであっても、それをはみ出してはいけないと考える。しかし、創造性を高めたいならば、限界に挑むことだ。

創造的な環境では、自由に夢を見ることができる。目標は焦点を定めるのに役立つが、夢は力を与えてくれる。夢は世界を広げてくれる。

ジャック・ウェルチ氏は「戦略とは、まず現時点で自分がどこに位置しているかを知ることである。前はどこにいたいと思っていたかでも、いるはずだったかでもない。今どこにいるかである。次に、5年後の自分の位置を想定する。最後に、今の地点から5年後の地点まで到達できるかどうか、現実的にどの程度の可能性があるかを判断することである」と言う。

戦略における最大の目的は、今現在の状況と目標をつかむことである。いったん問題が明白になれば、解決策はシンプルである場合が多い。問題を解決するには、問題を明確に定義しなければならない。問題が明白になったところで、情報を収集する。

優れた思考法を身につけたければ、常識や俗説に流されない心構えが必要になる。常識的な考え方を疑問視することである。友人のケビン・マイヤーズは、「常識の何が問題かというと、自分では何も考えなくてもいいということだ」だ言う。常識はすべて「賞味期限」が切れている。

とはいえ、成功思考を自分のものにするのは簡単ではない。もし簡単であれば、今ごろ誰もが成功しているはずだ。残念ながら、ほとんどの人は、楽をして人生を送りたいと思い、苦労して考え、リスクをとってまで成功したいと思う人は多くない。人と同じことを考え、まるで自分で考えたかのようにふるまっているほうが簡単である。トレンドを追いかけているうちは、実は私たちは何も考えていないのである。

マンネリから抜け出す最良の方法は、革新を起こすことである。少し頭を使うだけでも、小さな革新を毎日のように起こすこともできる。いつもと違う道を通って通勤したり、行きつけのレストランでいつも注文しない料理にチャレンジしてもよい。よくわかっている仕事をするのに、いつもとは違う同僚の助けを借りる。つまり、自分の「自動運転装置」のスイッチを切るのである。「非・常識」に考えるとは、疑問を呈し、よりよい選択肢を求めることでもある。

利他的に考える習慣

日本では、「出る釘は打たれる」という言葉が良く知られている。今でも日本では、その他大勢に埋もれていたほうが安心して過ごせるのは間違いないだろう。みんなと同じようにしていることが無難なのである。小中学校でのイジメも、みんなと違う子がやられてしまうことが多いという。

私の知るある会社では、「出る釘は育てる、出ない釘は無視する」という標語を会社案内に載せていたことがあった。もちろん外資系企業だ。出てこないヤツにはチャンスを与えることはないと、非常にハッキリした方針を持っており、社員も活気があったと記憶している。

みんながどう思うかということより、あなたはどう思うかを重んじることは、言い換えれば個性を尊重するということだ。個性がなければ成功しないし、創造性も発揮しにくいと本書では言っている。とはいえ、自分だけが良ければいいということではない。個性と独りよがりは区別しなくてはいけない。

本書でマックスウェル氏が言う「習慣」の中に、利他的に考える習慣=「独りよがり」を捨てよ、というのがある。いかにも牧師らしい。

最後に余談をひとつ。

よく知られた話ではあるが、かの故・松下幸之助氏は、「出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない」という名言を残している。貧しく学歴もなく、体の弱かった松下幸之助氏が、その他大勢から抜け出して大成功したという事実を考えると、その裏にもきっと「成功思考」があったのだろうと思う。

目次概略

ジョン・C・マクスウェル著/齋藤孝訳・解説『その他大勢から抜け出す成功法則~「何か必ずやる人」11の考える習慣術』の目次概略は以下の通り。

■「考える習慣」を変えると、人生はここまで変わる

  1. 「自分を変える」のはそれほどむずかしくない
  2. 自分のレベルをもう一段上げる「考える習慣」
  3. いい人生に不可欠な「正しい土」と「正しいタネ」

■成功者の「秘密マニュアル」11の「考える習慣」

  1. 大局的に考える習慣
  2. 集中的に考える習慣
  3. 創造的に考える習慣
  4. 現実的に考える習慣
  5. 戦略的に考える習慣
  6. 前向きに考える習慣
  7. 反省して考える習慣
  8. 「非・常識」に考える習慣
  9. 「アイデアを共有」して考える習慣
  10. 利他的に考える習慣
  11. 実利的に考える習慣
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