クラウド型の日報サービス

デジタル活用
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管理者から見た日報

社会人になり、営業職としての毎日を締めくくったのが「セールスメモ」を書く仕事だった。セールスメモとは、要するに営業日報だ。その日の活動内容と結果、所感や次のアクションを記述し、上司の机上に置いておく。翌朝には上司がコメントを書いたものが戻ってくる。上司も営業活動を実施するプレイング・マネジャーだったので、必ずしも毎日顔を合わせていたわけではない。そうした状況でも、日報を介して緊密なコミュニケーションを実現するという側面があったように思う。

会社の業務の効率化を図り、生産性を向上させるために不可欠なのが「社員の管理」。だから管理職というものが存在している。社員の管理を徹底するには、管理職が個々の社員の状況を詳細に把握する必要がある。管理者からみたとき個々の社員について、例えば下記を知っておきたいはずだ。

  • 業務の進捗状況
  • 業務にかかる所要時間
  • 業務目標達成のための意欲
  • 取引先や顧客との関係性
  • 身心の健康状態

管理者はこうした点を把握し、改善すべき点は改善するよう指導し、問題点は社員とじっくり話し合って解決するといった取り組みが必要となる。ただし、現実には「社員管理だけをやる管理職」はいない。今のご時世、上位マネジメントほど多忙で、日常業務をやりながら社員の言動をチェックし、行動を把握することは不可能に近い。

社員の行動を把握する方法としてはさまざまな手段が考えられるが、費用をかけずに今すぐ取り組むことのできる方法として、「日報の活用」が挙げられる。特に、少ない経営陣で業務の全般を管理をしているスモールビジネスでは、日報を活用して社員管理をするのが有効だ。

日報の役割

日報には、その日に行った業務内容などを記入する。日報を記入する本人にとってのメリットとしては以下の4点が挙げられるだろう。

  • その日に行った業務を把握することができる
  • 自分が行っている業務を整理することができる
  • 翌日からの業務予定をたてやすくなる
  • 業務の改善点を把握しやすくなる

理系の大学4年生や大学院生は、毎日の実験を記録する「研究ノート」または「実験ノート」を書くように指導を受ける。この小さな毎日の習慣が大きな成果につながることを知っているからだ。社員にとっても日報は、「本来は」自分自身の成果に跳ね返ってくる習慣といえるだろう。

管理者にとっての日報は、社員の行動を把握する以外にも、顧客状況の把握や仕事内容の把握などに有効といわれる。こうした日報の役割を確認してみよう。

社員の行動の把握

管理者にとって、社員の実態は案外把握しにくいものだといわれる。管理者には日々こなさなければならない重要な業務があり、社員に張り付いて行動を監視しているわけにはいかない。

また、管理者に一挙手一投足をつきっきりで監視されてしまうと、社員はそれが気になって集中力を欠いてしまい、結果的に業務遂行の効率性が低下しかねない。そこで、日報を活用することによって、社員の行動や業務の進捗状況を把握することにする。

日報によって社員の行動や業務の進捗状況を把握できれば、例えば以下のようなケースが改善できるだろう。

■社員の業務状況を把握できず具体的な指示ができないケース

管理者が新しい指示を出すとき、社員から「忙しくてムリです」と言われる場面はよく見かける。社員がどのような仕事で忙しいのかが全く分からず、業務の状況を説明させるなど、無駄な時間を費やすことになりがちだ。または、新しい指示と、多忙の原因の業務の優先順位を判断したくても、その判断材料がなければ何も指示できない。日報を活用し、管理者が社員の行動や業務の進捗状況を把握していれば、具体的かつ的確な指示ができるはず。

■社員の能力に対して誤った評価を下してしまうケース

例えば、社員AとBに同じような様式の商品マニュアル作成を指示したとしよう。Aが商品マニュアルを3日間で作成したのに対し、Bは1週間かかって作成した場合、上司や経営者は単純に「A社員の方が仕事が速く優秀である」という評価を下すかもしれない。

しかし、Bは、商品マニュアル作成のほかに、顧客から依頼された提案書作成などの重要業務を抱え、同時進行で作成していたのかもしれない。その際、提案書作成の方にほとんどの時間を費やし、商品マニュアル作成の実所要時間は1日だった可能性もある。日報を付け、活用していれば個々の社員のそういった業務状況を把握することも可能だ。

顧客状況の把握

日報を活用することによって顧客状況を把握することが可能になる。会社にとって、顧客が自社の商品やサービスをどう評価しているのか、顧客が現在どのようなサービスを望んでいるのかといった「顧客状況の把握」は必要不可欠といえよう。

営業担当者が、日報に「いつごろ」「訪問先」「提案内容」「顧客の反応」「顧客の業績」「顧客の業況」などを記入することによって、顧客状況を把握することが可能になる。しかも、顧客状況を把握することは日々の営業活動に非常に有効。

営業担当者が顧客を訪問した際に聞いた話を日報に記入しておくことによって、管理者は「顧客が新事業に手を広げようとしている」という業況を把握することができ、営業担当者に的確な指示を与え、その後の営業活動に反映することができる。

また、自社の商品やサービスへのクレームを日報に付けることで、その顧客に対するフォローを行ったり、クレーム内容を自社の商品やサービスの質の向上に役立てることなどが可能になる。

仕事内容の把握

社員が日報を付けることによって、それぞれの仕事の内容や進め方を把握することができる。会社は、たとえどの社員が急に休むことになったとしてもいつも通り営業していかなければならない。誰かが抜けても欠けても「それでも会社は回って」いなければならない。

しかし、ある仕事を同じ社員がずっと担当している場合、それほど困難あるいは特別な仕事でないにもかかわらず、ほかの社員にとって、その仕事が「内容や進め方が分からない仕事」になってしまうことがある。これでは、その社員がいない場合などに対応できなくなってしまう。その社員が突然の事故にあったり、突然会社を辞めてしまったりしたらなおさらだ。日報にその日行った仕事の内容や進め方などを記入しておくことによって、特定の社員しかできない仕事を減らすことが可能になる。

また、日報を付けることによって、社員それぞれが「今自分はどのような仕事をしているのか」ということが明白になるため、「うっかり仕事をやるのを忘れてしまった」ということも減少できる。

クラウド型の日報サービス

日報への記入方法として、メール/Excel/手書きなど従来の方法を考えているなら、ぜひクラウド型の日報サービスにすることを考えてみるとよい。メールや手書きは無料だが、日報サービスは社員ひとりあたり500~1000円/月がかかるが、人数の少ないスモールビジネスにとっては、それほど大きな負担ではない。それよりも、メールや手書きの場合の管理者側の手間と、情報共有のスピードを優先すべきと考える。

このコラム執筆時点で提供されているクラウド型の日報サービスと、その特徴をいくつか挙げておく。どのサービスも日報提出が短時間ででき、スマートフォンで記載・閲覧可能だ。さらに社内コミュニケーションの手段もそろっている。

NotePM(ノートピーエム) 

  • 強力な検索機能。PDFやExcelの中身も全文検索
  • 簡単にマニュアル作成できて、履歴を自動記録
  • フォルダ階層とタグ機能で情報を整理しやすい
  • ページを見た人がわかる

gamba!(ガンバ)

  • 日報提出忘れ防止のリマインド機能
  • 目標管理(KPI)とグラフ表示
  • iOS、Android対応

Pace(ペース 

  • 日報に入力された作業時間を集計し、業務内容と利益を見える化
  • 案件の進行中でも、常に最新の利益を確認できる
  • 利益を増やす方法が、シミュレーション機能でわかる

nanoty(ナノティ) 

  • 「いいね!」やコメント機能
  • 作業時間、工数の集計
  • サンクスポイント機能

Qiita:Team(キータチーム) 

  • エンジニア向けブログ「Qiita」のビジネス版
  • コメントやイイね!機能
  • エンジニア向けAPIが豊富

Slack(スラック) 

  • 世界中で人気のビジネスチャットツール
  • どんな種類のファイルでも気軽に共有可能
  • 1500以上の外部サービスと連携可能
  • 無料ビデオ通話と音声通話。話しながら画面共有も可能

Chatwork(チャットワーク) 

  • 国内利用者数が一番多い
  • 中小企業向けビジネスチャット
  • タスク管理
  • ファイル共有

LINE WORKS(ラインワークス)

  • LINEと画面が同じなので誰でも使いやすい
  • トーク、カレンダー共有
  • スタンプ機能

houren.so(ホウレンソウ)

  • 写真+コメントで日報提出
  • GPS情報で写真を自動仕分け
  • 写真書き込み機能

BeWorks(ビーワークス)

  • グループウェア機能(スケジュール・タスク管理、ワークフロー)
  • 案件管理、損益分析機能
  • マルチデバイス対応

未来日報

  • マルチデバイス対応
  • 日報と顧客情報管理が同時にできる
  • 次の予定、アクションを日報で管理

日報に限らず、クラウド型のサービスは「無料お試し」が可能だ。全ての業種・規模に適した日報サービスは存在しない。実際に使ってみて、自分の組織に合っているか、導入後にはどういう画面を毎日見ることになるか等々を必ず確認したほうがいい。

日報導入時の課題

日報の活用には代表的ともいえる課題がある。それは「面倒くさい」ということだ。社員が、「毎日日報を書くのが面倒になる」と思うようになり、管理者も「読むのが面倒になる」「ただ読むだけになる」ということがあるだろう。

クラウド型の日報サービスをお勧めする理由のひとつは、これらの開発会社が「面倒くさいということを十分に知っている」からだ。

短時間で記入(入力)しやすい日報入力画面を提供するとともに、突発的な仕事も簡単に記入できるような工夫をしているところもある。日報を書くことで次のアクションをクラウドサービスが指示してくれるなど、「書いておしまい」ではなく「書くと得する」ことを志向しているものもある。

また、運用上の工夫として、月に一度日報を基に月報を作成することとし、月報を踏まえたうえで、翌月の目標や、半期ごとにより効率的に業務を進めるための改善案などを設定させるといった方法も効果的だ。さらには、目標を達成したか否かを賞与に反映させるなどの取り組みも導入すれば、社員の日報活用を促進することになるだろう。

冒頭に書いた通り、そもそもの目的は会社の業務の効率化を図り、生産性を向上させるための「社員の行動把握」だ。決して日報サービス導入を目的にしてはいけない。社員の行動把握の「手段」でしかないことを肝に銘じよう。

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