減量について食事から考える

前向き人生
この記事は約6分で読めます。

食べていけないものはない

この20年、健康診断後の面談では必ず減量するように言われてしまう。減量にとって一番の苦痛は、好物を食べられないかもしれないということだろう。大好きなコンビニデザートを断念したり、丼飯やラーメンを食べるのを躊躇したりといった具合だ。しかし、生身の人間の場合、このような状態は決して長続きしない。減量中でも仕事が多忙になるとドカ食いに走り、結局のところ減量前より太ってしまうことも何度かあった。

糖尿病予防の教育プログラムでも医者から減量を薦められた。しかし、医者が言うには、減量目的であっても、食べたいのに我慢しなければならない食品などないとのことだ。太る元凶のようにいわれる食品にも、キチンと役割がある。むしろ食べないことでカラダに悪影響を与えることのほうが問題だ。まずは減量中にとかく嫌われがちな「糖質」食品について考えてみよう。

食物に含まれる糖質は、いくつかの種類に分けることができる。果物やはちみつに含まれるブドウ糖、果糖。砂糖に含まれるしょ糖。穀類、イモなどに含まれているでんぷんもまた糖質だ。これら糖質が体内でどんな働きをするのだろうか。

最も知られているのは、運動時のエネルギー源になること。階段を上り下りするのも、ダンベルを持ち上げるのも、糖質の力。そして、最も重要な役割は、体内の臓器を働かせるエネルギー源となっていることだという。とくに、脳、神経系、腎臓の一部は、普通、糖質以外のエネルギーを受け付けない。

食事でまったく糖質を摂らなくなると、脳や神経のエネルギーが不足し、思考能力や反応が鈍くなることは知られている。複雑な仕事で長時間考え続けると甘いものを欲するようになったり、過激なダイエットで頭がボ~ッとするのは、このためだ。糖質が不足すると腎臓の働きも悪くなり、カラダに必要な栄養分が、尿と一緒に出ていってしまうなど、良いことがあまりない。

甘いものや主食を一切断って、タンパク質と野菜だけを補給すれば、確かに一時的に体重はかなり落ちるが、それだけ内臓に負担がかかっては、とても長期間続けられないし、健康的に痩せることは無理だろう。適量な糖質はカラダに必要なものだということを再認識しよう。

糖質の選び方と食べ方

糖質はカラダに必要な栄養素だし適量は必要だが、もちろん食べ過ぎれば、余分な分が脂肪として蓄えられてしまう。大切なのは適量をわきまえておくことだ。では、どんな糖質食品をどれだけ食べればよいのだろうか。

参考までに、1日に必要な糖質摂取量は次の計算式で算出できるらしい。

標準体重(kg)× 活動量(kcal)× 0.6 ÷ 4

上記の「標準体重」は、BMIが22になる体重なので、標準体重=身長×身長×22だ。身長が180センチなら、標準体重=1.8×1.8×22=71.28(kg)という計算になる。活動量は、日常生活に依存するようだが、普通に生活しているのなら25~35くらいになる。

ものすごくザックリ計算すると、大半の人の必要な糖質摂取量は200~300グラムとなる。ごはんだけでこの量の糖質を摂るとすると、茶碗に約5杯前後。平均的な日本人の糖質摂取量が300グラム程度らしいので、普通の生活だと「若干多いかな」ということになるだろう。

あまり無理しない減量ならば、糖質の量を最低必要量の130グラム程度に抑えておくといいという。おかずと一緒に、毎食ごはんを軽く一杯食べると、この量をカバーする計算になる。糖質制限をするつもりなら100グラム程度に減らし、ハードな糖質制限なら、130グラムの半分の70グラム程度にするというのが目安だという。

仮に、無理しない減量のために、糖質の量を最低必要量の130グラム程度にするとしよう。これを3食で分けると、1食で40グラム程度ということになる。糖質が多い炭水化物で考えると、この40グラムという数字は、「一般的な1食分より少なめ」と覚えるといい。ごはんなら茶碗1杯の2/3、パンなら5枚切りの1枚分、うどんなら1玉より少なめが糖質40グラムに相当する。

前述の通り、糖分にもいろいろ種類がある。でんぷんに比べて吸収の速い果糖やしょ糖は、一日約50g程度にしておくとよい。甘い方の糖質は消化・吸収が速い分、血糖値が急激に上がるので、脂肪も合成されやすい。もし食べるなら、夜よりも昼間がお勧め。量とタイミングさえ間違えなければ、糖質はまったく恐ろしいものではない。ケーキもごはんも、健康的な減量にはジャマどころか、必要不可欠なものだと考えるべきだ。

脂質だって必要なもの

減量中、糖質以上に敵視されているのが脂質だ。資質とは、液体の油や個体の脂。直接脂質を摂らなくても、余分な栄養素は次々に脂肪となり、体内に中性脂肪として溜まっていく。減量で、真っ先に食べないようにする食品が、この脂質と誰もが考えがちだ。しかし、脂質はできるだけ減らすべきものではあっても、摂らなくて良いものではない。「油抜きダイエット」のような行為は論外だという。脂質には、ちゃんとした役割があるのだ。

エネルギー源としての脂肪は、余分な糖質やアミノ酸を材料にして体内でつくることができる。では脂質を摂らないでいいかというとそうではない。「エネルギー源」以外の役割を持ち、体内では決して合成できない脂肪も中にはある。

「必須脂肪酸」という植物油に多く含まれるリノール酸、リノレン酸。これらが極端に足りなくなると、発育障害や、皮膚炎などの欠乏症が認められるそうだ。サンマやアジなどの背の青い魚やマグロのトロに多く含まれているEPAやDHAと呼ばれる「脂肪酸」も、血液が血管の中で固まるのを防いだり、脳の機能を活性化させる。

また、脂質は他の食品と一緒に摂ることで、カラダに吸収されにくいビタミンA/D/E/Kという「脂溶性ビタミン」を摂ることができる。野菜にドレッシングをかけたり、油炒めをするのは、美肌のためにも大変効果的だ。その上、食事に脂質を取り入れると、それだけ腹持ちが良いので、間食に走らずにすむという効果もある。

脂質の一日の必要摂取量は、一日の総エネルギーの20~25%が適量といわれている。2000キロカロリーなら、50グラム前後。健康的に減量するなら、油そのものはこの半分の25グラムいない程度に抑えておくといいらしい。

減量に有効なカロリーの把握

生活習慣や、体質の変化、過度のストレスなど、減量が必要になるほど体重が増える理由はいろいろあるだろうが、ひとつだけ共通する「確かなこと」がある。それは、出すエネルギーより、入るエネルギーが大きいということ。エネルギーを過剰に摂ると、身体は忠実に余分な分を脂肪として体内に貯め込む。そうであれば、減量のためには逆の状態に持っていけば良いということになる。つまり、エネルギー不足の状態をつくるのが、食事による減量の基本原理。

しかし、エネルギーが不足するということは、ある意味で身体にプレッシャーがかかるということ。プレッシャーが強すぎればカラダは簡単にこわれてしまう。だからこそ、健康を害さないよう、最低ラインは守らなければならない。基礎代謝に必要なエネルギーを下回るようなダイエットをしてはいけないのだ。

では、どれくらいが目安なのかというと、基礎代謝プラス400キロカロリーくらいが、減量に有効な摂取カロリーだと考えておこう。もちろん、生活環境は人それぞれなので厳密ではないが、目安として把握しておくことは重要だ。

基礎代謝については、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」に記載があるのでそれを以下に示す。

引用: 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」 4-2 基礎代謝基準値

20歳代男性で身長180センチの標準体重であれば、上表からだいたい基礎代謝が1700キロカロリー。基礎代謝プラス400カロリーだとするなら、2100キロカロリーが目安だと計算できる。

目安カロリーを実現するなら何でもいいというわけではない。例えば、このカロリーをおかゆやリンゴ、ゆで卵などの「単一の食品」で摂ることは勧められない。カロリーは落としても、栄養素を落とすべきではない。糖質や脂質、タンパク質にも、それぞれちゃんと役割がある。ごはん、果物、乳製品、野菜、魚介、肉類、豆製品などをバランスよくとることが大切だ。

タイトルとURLをコピーしました