信用保証協会と信用保証制度

制度の知識
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創業時の資金調達と信用保証制度

スモールビジネスを始めるときや、創業間もない頃に悩む課題のひとつが「資金調達」だ。製品・サービスの開発も大変だし、顧客や販路の開拓も一筋縄ではいかないが、それらと同じくらいお金の話は重要といえる。資金調達を気にしなくて良いくらい潤沢な自己資金でビジネスを始められるのなら問題ないが、そんな話は殆ど聞いたことがない。

創業間もないビジネスの資金調達といえば、代表的なのはベンチャーキャピタルや、クラウドファンディングにお世話になることだ。前者は「出資」、後者は一般的には「商品・サービスの購入」だが、購入に限らず、寄付、投資といったスタイルでの資金調達も可能だ。

資金調達には他にも「お金を借りる=融資」という選択肢がある。

創業間もないスモールビジネスが頼る融資として、最もポピュラーなのは「制度融資」だ。制度融資は、地方自治体・金融機関・信用保証組合が連携して提供する融資のこと。 そもそも中小企業や小規模事業者といったスモールビジネスの資金調達支援を目的としている。 長期・低金利で借入することができるため、創業時や創業間もないときには必ず相談しよう。特に「創業支援」を目的する制度融資は絶対に検討すべきと考える。

信用保証制度とは

スモールビジネスの代表格である中小企業は、大企業と比較して担保力や信用力が不足しがちなため、金融機関からの借入ができない場合がある。信用保証制度は、これら中小企業が事業資金を金融機関から借入する際に信用保証協会が信用保証する制度だ。創業支援に関連する制度融資を使うとき、間違いなくこの信用保証制度を利用することになる。そもそも実績のない状態で、数千万円の融資を受けることになるため、融資の申し込み時に「協会から信用保証もらってきてください」と言われるのだ。

信用保証協会の概要

信用保証協会は、担保力や信用力が不足しているスモールビジネスの中小企業者(個人または法人)に対する事業資金の融通の円滑化を図ることを目的として、信用保証協会法に基づき設立された認可法人だ。内閣総理大臣および経済産業大臣が監督する組織。金融機関から融資を受ける際のいわゆる保証人になってくれる。同協会は、47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)に設置され、全国に51の協会がある。

お金を貸す側の金融機関から見ると、普通に融資するのと違って、保証付き融資になるため、融資枠の拡大が図りやすい。これは借りる側のメリットでもある。

信用保証制度の概要

信用保証制度は、基本的にスモールビジネス(中小企業・小規模事業者)、金融機関、信用保証協会の三者が当事者だ。

保証の対象

保証の対象となるのは、信用保証協会の事業区域(都道府県単位の協会ではその都道府県、市町村単位の協会ではその市の区域)内において、商業、工業、鉱業、運送業、サービス業、その他の事業を行う中小規模の事業者およびその組合など。

また、中小企業者の資金の借入について信用保証協会が債務保証を行う金融機関は、主として一般市中金融機関などであって、いわゆる貸金業者は含まれない。

保証の条件

■保証限度額

中小企業者が、金融機関から事業資金の借入を行う際に利用できる保証の最高限度額は次のようになっている。その他の特別保証制度については、保証限度額を引き上げたり、保証限度額を別枠化するなどの措置を設けている。

  • 普通保証 2億円以内(組合などの場合は4億円以内)
  • 無担保保証 8000万円以内(組合などの場合は8000万円以内)

■保証料

保証料は各保証協会のホームページで案内されている。保証区分や融資金額によってもかなり違うので、公開されている一覧表を参考にすること。

■保証人および担保

保証に際しては、必要に応じて保証人、担保を徴求する場合がある。ただ、一定金額の範囲内で、第三者保証人を徴求しない場合が多いので、実際の融資の際に確認すべき項目だ。

保証の申込み

保証の申込みには以下の2つの方法がある。

  • 貸付を受けようとする金融機関を通じて行う
  • 信用保証協会に対し直接申し込む

利用者は取引の実情に応じ、そのいずれかの窓口「「信用保証委託申込書」を提出する。なお、このほか商工会、商工会議所、都道府県または市町村の商工担当課においても保証のあっせんを行っている場合がある。

代位弁済と回収

信用保証協会の保証付きで金融機関から貸付を受けた中小企業者がその債務を履行できなくなったときは、信用保証協会は、金融機関からの請求により中小企業者に代わって保証債務を履行する。これを「代位弁済」という。信用保証協会が金融機関への代位弁済を行った後は、信用保証協会に求償権が発生し、信用保証協会が中小企業者から債権の回収を行うことになる。

これがあるので、金融機関は創業間もないスモールビジネスにも融資できるのだ。なお、信用保証協会は債権の一部について債権回収会社に委託して回収を行っている。

創業間もないスモールビジネス

制度融資は経済状況や、政策、自然災害などの状況によって毎年内容が変わっている。ただ、創業支援に該当するものは必ずあるので、インターネットで調べてみたり、口座開設したメインバンクで相談したり、商工会議所や自治体の商工担当課で聞いてみると、現状の課題を解決するようなものが見つかる可能性が高い。

ここでは、参考までに2021年6月時点で全国信用保証協会連合会が公開している創業計画者向けの概要と、東京信用保証協会が公開している東京都制度の創業融資の概要を以下に示しておく。

全国信用保証協会連合会

「信用保証協会では、創業をお考えの皆さま向けに、「創業等関連保証」「創業関連保証」を通じて融資の支援を行っています。」というガイドが公開されている。保証協会が、相談時のポイントは以下の通りと記載している。

  • 経営実績がない創業時に融資を受けるには「事業計画書」が必要。信用保証協会にひな形が用意されているので相談しながら進める
  • 自身の強みを明確にした上で事業計画を作成する
  • 「創業支援」の専門部署を設けている信用保証協会もある

■創業等関連保証
 ・対象:中小企業等経営強化法に基づく創業者、新規中小企業者
 ・保証限度額:1,500万円

■創業関連保証
 ・対象:産業競争力強化法に基づく創業者
 ・保証限度額:2,000万円

東京都制度の「創業融資」

東京信用保証協会では、制度融資について「東京都制度」「協会制度」「区市町制度」を案内している。ただし「区市町制度」についての詳細は区市町に問い合わせる必要がある。東京都制度には、そのものズバリの「創業融資」という融資メニューがある。概要を見ていこう。

■融資対象者
 下記のいづれかに該当するもの

  1. 事業を営んでいない個人で、東京都内で創業しようとする具体的計画を有するもの
  2. 創業した日から 5 年未満である 中小企業者又は組合
  3. 東京都内で分社化しようとする会社又は分社化により設立された日から 5 年未満の会社

■融資限度額
 3,500万円

■融資期間

  • 運転資金:7年以内(据置期間1年以内)
  • 設備資金:10年以内(据置期間1年以内)

■融資利率例
 全部保証利率・固定金利 1.5%以内(3年以内)/2.0%以内(7年超)

問合せ

一般社団法人 全国信用保証協会連合会は、全国51の都道府県信用保証協会の上部組織。

信用保証協会の各種保証制度については、各都道府県信用保証協会に直接問い合わせるのがお勧めだ。

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