活気ある社内会議の実現を考える

組織の運用
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会議は無駄が多いのか

職種や職業によって多少の違いはあるものの、「会議なんてまったくない」という社会人はいないはずだ。特に「社内会議」は、仕事にかかわる多くのテーマについて議論し、最善策を決定する場だと考えていいだろう。

仕事を続けていると、景気変動や競合の動向といった外部環境の変化、新商品の開発や人材募集などの内部資源の変化に必ず直面する。当然、さまざまな懸案事項が発生し、個々の懸案に適切に対応しなければならない。そのためには、会社組織であれば多くの社員の知恵の出しあいと、社員の意思統一が必要となる。意見を聞いて多面的に議論し、それらを調整する場の一つが社内会議だ。

社内会議には、「部門内、部門間、会社全体」の意思統一を図るといった役割もある。異なる部門の長が意見を調整したり、経営者が自ら方向性について発表したりすることで意思統一を図る。これは非常に重要なことであり、これが実現できていない場合、例えば以下のような問題が起きる。

  • 経営者のビジョンが全社的に共有されていない
  • 部門や各部署の売上目標が社員に認識されていない

これでは、目を閉じて車を運転しているようなものだ。自分たちがどこにいて、どこに向かうかを社内会議で共有するのは本当に大事なことなのだ。

しかし残念なことに、多くの場合は社内会議に対する風当たりが厳しく、「時間の無駄」「コストの無駄」などの指摘を受けることがある。ここで改めて社内会議の重要性を認識し、活気ある社内会議を考えてみたい。

社内会議の種類と課題

ひとことで「社内会議」といっても色々ある。ここでは会議の種類と、課題点をまとめてみる。

社内会議の種類

社内会議はさまざまな名目で開催される。社内会議を目的別に分類すると次の4種類になる。

  1. 連絡(伝達)会議:情報の伝達と確認を行うための会議。経営者が今後の経営方針などを周知徹底する場合などに行われる。
  2. 対策(問題解決)会議:情報交換だけでなく、問題を具体的に解決するための会議。例えば、不良品など消費者から寄せられたクレームへの対策を検討したりする。
  3. 調整会議:社員間や部門間の利害の対立を調整するための会議。双方の歩み寄りの姿勢が重要だ。
  4. 決定会議:結論が出た議案について、正式な決定を下すための会議。部門から上がった事案でも、決定会議により全社的な取り決めなり、全社員がこれに従う場合もある。

社内会議の課題

前述のように社内会議にはいろいろな種類がある。時期によっては毎日のように会議が行われ、「会議に参加することが仕事」となってしまうことさえある。そうなると「社内会議はムダなものだ」という意識がうまれることもあるだろう。

一般的に、社内会議には次のような課題があるといわれている。

■「座談会」になってしまう

社内会議の中には、会議という大義名分で行われている「座談会」になってしまっているケースがある。参加する社員から何も意見が出ないばかりか、居眠りする者までいるといった状況だ。それにもかかわらず、「何年も続けているから」「会議をしなければ落ち着かないから」などの理由だけで会議が開かれる。

会議の目的を「コミュニケーションを図りながら社員の知恵を集約するとともに、組織の意思統一を図る」とあらためて認識し、座談会からは脱却しなくては本当に時間の無駄になる。

■「話し下手」の発表者

情報の伝達と確認を目的にする連絡会議では、発表者は経営者や役員となる。経営陣が話をするという時点で、社員は真剣にその話に聞き入り、理解しようと務めるのが本来の主旨。しかし、会議が長かったり回数が多い場合、発表者の話が上手でなければ社員が飽きてしまう。発表者が重要な話をしていたとしても、参加者が退屈に感じてしまっては、伝達という目的を達成できない。

途中で質疑応答の時間などを設けて気分転換するとか、何らかの方法で聞く側の集中力低下を防ぐ工夫が必要だ。

■「頻繁すぎる」回数

定期的に集まって社員間のコミュニケーションをとり、互いの近況報告を行うことは非常に大切なことだ。ただ、「社内会議は継続することに意義がある」と考える経営者は、大きなテーマがなくても会議を開くことがある。こうした体制は見直したほうがよいだろう。

例えば、決算期など忙しい時期に、時間を割いて参加した会議が内容の薄い座談会では、社員から不平が出ることが容易に想像できる。地方から会議のために出張してくる社員の場合、出張コストの問題もある。会議が頻繁すぎるとさまざまな問題が生じる。

活気ある社内会議の実現

本来、社内会議は会社の重要事項を決定するための大切な場で、参加者は積極的に会議に参加しなければならない。しかし、上述のような課題から、会議の意義が薄れてしまっているケースがある。ここでは、マンネリ化し単なる座談会となってしまった社内会議を再び活気あるものとするための留意点について考えてみよう。

回数の見直し

決まった日時に開かれる定例会議は、部門間や社員間のコミュニケーションを図るうえで重要だ。定例会議を活性化させるためには、会議の回数を見直して会議運営の効率化を図ることが大切。例えば、以下の運用を行ってみる。

  • 特に議題のない時は中止する
  • 伝達だけならはメール配信で済ませる

メール配信については、社内掲示板でも構わない。すべての事項を社内会議で決定する必要はないはずだ。メール配信で済む程度の報告を社内会議で行っているのであれば、それは時間の無駄に他ならない。

議題の見直し

「最近の業績不振をどう打開するか」などのテーマで会議を開いた場合、議題が大きすぎて、意見を求められた参加者もどんな発言をしてよいか迷ってしまうだろう。また、ブレーン・ストーミングによって、とにかく多くのアイデアや意見を集めることもあるが、議題の設定によってはアイデアがバラバラで収拾がつかないこともある。

議題は、具体的かつ細かく絞り込むことが大切。「最近の業績不振をどう打開するか」ではなく、「A商品の販売数が伸び悩んでいて、それが利益を圧迫している。A商品の販売数を伸ばして利益拡大を目指すにはどうしたらよいか」と設定するほうが、有益な社内会議になるはずだ。

会議資料の準備

「A商品の販売数を伸ばすための戦略」をテーマに会議を開く場合、参加者に日時とテーマだけを伝えるだけでは活発な意見は期待できない。会議を開く前に、例えば、「A商品の最近の販売実績の推移」や「同業他社の類似商品開発動向」などの具体的な情報を提供すれば、参加者は現状を把握したうえで会議に参加することができる。

質疑応答時間の設定

業績などを報告するだけの伝達会議の場合、質疑応答の時間がないことが多い。誰がみても明らかな客観的事実を伝えるだけの会議なら、質疑応答の時間がなくても問題ないだろう。しかし、役職に関係なく上司が部下と一緒に参加している場合、上司と部下が知っている情報に大きな開きがあると認識しなければいけない。上司にとっては当たり前のことでも、部下にとってはよく分からない話しであることもあるからだ。

その際、質疑応答の時間がなく会議が終わってしまえば、部下は疑問を抱いたまま会議を終了することになってしまう。特に新入社員が参加しているような場合、若手社員は会議の内容に疑問を感じていても上司に遠慮してなかなか質問ができない。若手社員に対しては、会議終了後に上司が個別に説明するなどの配慮が必要だ。

若手に社内会議の議事録を作成させるのも良いアイデア。議事録を作成するためには、社内会議の内容をすべて理解しなければならないため、会議への参加意識が高まり、不明な点は自発的に質問するようになるはずだ。

議長のスキルアップ

社内会議成功のキーマンは議長だ。議題を十分に理解しているばかりでなく、雰囲気の明るい人、話しの上手な人を議長に選出するのがよいだろう。適切な人材がいない時は経営者自らが議長を務める。話しが上手とは限らないが、「経営者が議長」というだけで、引き締まるはずだ。

議長に相応しい人材

会議の充実とスムーズな運営にはそれなりのスキルが必要だ。議長に相応しい人材とそのスキルについてまとめてみよう。

■明るい雰囲気

議長は会議のムードメーカー。議長の人柄によって会議室の雰囲気はリラックスしたものにも堅苦しいものにもなる。理想的なのは、時に応じて冗談をいって雰囲気を和ませることができるような人だ。反対に、真面目で堅苦しい人が議長になると、会議は少し居心地の悪いものになってしまう。

■感情のコントロール

計画的に会議運営すたつもりでも、会議はふとしたことで脱線する。また、質疑応答の時間を設けても誰も発言しなかったり、参加者があくびをしている場合、会議を取り仕切る議長が機嫌を損ねてしまうことがあるだろう。しかし、このような時でも、議長には決して表情や態度に出さずにクールに対応し、会議の進行を計画通りに修正していける能力が求められる。

■聞き上手

大勢の参加者の前でも物怖じせずに会議を進めるために、人前に出ることに抵抗を感じない人を議長とすることが大切。ただし、人前で発言することが大好きな人を議長にすることは勧めない。あくまでも議長は会議の進行役、まとめ役だ。議長がしゃべり過ぎると参加者がしらけてしまう。議長と参加者の発言時間の割合が3対7くらいの、聞き役に徹するくらいがちょうどいい。

■中立的なふるまい

議長も議題に対して自分の意見を持っている。しかし、議長はいつでも中立的な立場で会議を進行することを心がけなければならない。議長の発言に個人的な意見が入ってしまうと参加者の発言を公平に判断することができない。議長は、常にすべての参加者に公平で、参加者の意見の引き出し役でなければならない。

■臨機応変な対応

会議の場では、キョロキョロと辺りを見回し落ち着かない参加者や、あくびをして居眠りしている参加者もいるだろう。発言を独り占めする者もいれば、批判的な発言ばかりする参加者もいる。このような際、「場の空気」を察して、臨機応変に対応できる議長が理想だ。

例えば、居眠りをする参加者がでてきたら、休憩時間を設けたり、席替えをして会議室の雰囲気を新鮮なものとするのが臨機応変な対応だ。会議へ積極的に参加しない人に対しては、思い切って名指しで質問してみるのもよいだとう。発言時間の長い参加者がいる場合には、あらかじめ「発言は○○分以内でお願いします」などと伝えればいい。

色々と述べてきたが、要は「会議の場数を踏む」ことだ。ここまでのスキルは、勉強するより実践によってうんと向上する。

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