中小企業は社外研修の活用を考えよう

中小企業経営
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社外研修の多様なメリット

2022年11月に公開したコラム「中小企業における人材育成のポイント」の冒頭部分にこんなことを書いた。

スモールビジネスにとって人材育成への「投資」をどのように考えるかは、経営者の悩みのひとつだ。社員数がそれほど多くないことから、個々の社員の能力が企業の業績を大きく左右するであろうことは分かっている。とはいえ、目先の利益を優先してしまい、人材育成にかける時間とコストをなかなか工面できない。

研修専門会社が提供する企業向け研修を調べてみると、だいたい1人1日3万円が相場だ。3日なら1人9万円。そもそも大企業と違って、スモールビジネスに飛びぬけて優秀な人材が来るわけではない。経営者としては、ここにどの程度のお金をかけて良いものか迷うのは当然だ。

中小企業における人材育成のポイント

このあとに月額35,000円の「人材育成のサブスク」ともいえる研修プログラムを紹介し、小さな会社であっても社員研修を実施することで、社員のモチベーションが随分向上することを述べた。

社外研修を行う研修機関は数多くあり、実は上記の「人材育成のサブスク」一択ではない。しかも研修を提供する会社は、各々で独自のノウハウや専門知識を持っている。研修内容が多種多様なため、会社側としては、社員に必要と思われるスキルに合わせて、どの会社のどの研修メニューを選択するかを検討する必要がある。

今回は、自前で多様な研修プログラムを持てず、OJTに依存しがちなスモールビジネスが、社外研修を活用することについて考えてみたい。

社外研修活用メリット

実は、内部に研修担当組織を持っているような大企業でも、社員を社外研修に出すという事実がある。社員を社外研修に出す場合、「業務に必要なスキル獲得」を主目的だと考えがちだが、会社側にとっては次のようなメリットが期待される。

■講師の専門知識に触れられる

社外研修の講師は専門コンサルタントなどのその道のスペシャリストであることが多い。彼らは数々の事例を分析しており、豊富な知識を持っている。その講義を受けることにより、体系化された知識を得られるばかりでなく、理論と実践を結びつけることが期待できる。

■客観的な把握ができる

社外研修では、参加者の前でロールプレイなどを行い、良い点、悪い点などを指摘し合うことがある。普段自分で何とも感じていなかったことが、別の会社から参加したほかの参加者からみると違和感を感じたりする場合がある。こうした点を指摘し合うことにより、自らの行動を見直す機会になる。

■多様な事例に触れる

社外研修にはさまざまな業界、立場の異なる参加者が集まってくる。業界が違えば業務内容も全く異なるはずだ。日常の業務では遭遇しないような事例について、参加者同士で情報交換することができる。

■人間関係の拡大

社外研修の参加者がお互いに情報交換を行ったり、研修後も電子メールなどを利用し連絡を取り続けることにより、人脈として生かすことができる。社外研修は、社員が新しい人脈を形成する貴重な機会といえる。

小規模事業者の研修

社員数が30~50名程度の小規模事業者で、入社してきた人にどういう教育をするだろうか。ほとんどの場合は、入社初日のオリエンテーションの中のちょっとした教育と、あとは実務の中でのOJTということになっているはずだ。小規模事業者に代表されるスモールビジネスで実施する研修は主に以下の3つの方法が考えられる。各々についてみてみよう。

  1. 社外の公開セミナーに参画
  2. 社外から講師を招く
  3. 社員が講師となって実施

社外の公開セミナーに参画

人材育成会社やセミナー会社が行うさまざまな講座に申込み、そこに社員を参画させる方法だ。冒頭で触れたように、1人につき1日当たり3万円程度の費用が必要となる。前述の通り、社外の人脈を形成するきっかけになることや、異業種の情報などが得られ、新しい発見があることなどもメリットといえるだろう。

社外から講師を招く

人材育成を専門とするコンサルタントや、ある特定分野に秀でた専門家を会社に招き、社員研修を委託する方法。コンサルタントや専門家の得意とする分野や能力に大きく依存するため、事前に評判や実績を確認する必要がある。

コンサルタントや専門家が持つノウハウや、公開セミナーでは話せない競合の事例などを研修で利用することができる。また、講師によっては数万円の謝金程度の金額で呼ぶことができるため、参加社員が多い分だけ研修単価を低くできる。

社員が研修の講師となる研修

社員が講師となって別の社員を教育する方法もある。講師となる社員は、外部から招くコンサルタントなどに比べて企業内部の事情に明るく、別途に講師料などが必要ないことが特徴といえる。

社員を講師にして研修を実施したスモールビジネスの創業社長によると、講師を引き受けた社員のスキルが大きく伸びるそうだ。「人に教えるための準備」をすることで、そうなるという。

社外研修実施のポイント

目的を明確にする

多くの研修機関があらゆる分野の研修メニューを用意しているが、そのすべての研修が必要なわけではないだろう。また、漠然と「社外の研修を受けさせれば社員には何か身に付くだろう」と考えていたのでは、研修後の効果を把握できない。社外研修機関を探す前に、社員のどのような能力を補い、何を身に付けさせたいのかを明確にしよう。

よくある社外研修の目的例を以下に列挙してみる。

  • 新人研修:新卒社員や中途採用社員を一定レベルまで引き上げる
  • ITスキル研修:PCやオフィス向けソフトウェア(Word、Excel、PowerPointなど)
  • リスク管理研修:セキュリティ、コンプライアンス、セクハラ・パワハラ
  • その他研修:リーダーシップ、管理職、コミュニケーションなど

研修機関の情報収集

社外研修を行う目的が明らかになったら、その目的に合致する研修機関を探す。このとき、普通は検索エンジンで探し始めるだろうが、教育機関・研修機関の「業界団体」から辿ってみるもの効率的だ。

例えば、一般社団法人全国産業人能力開発団体連合会(JAD)は、全国の教育機関、研修機関などが中心となって設立された団体。同連合会のWebサイトでは、目的に沿って各機関の研修を検索することができる。

企業向けに講師派遣型研修、公開講座を運営する上場企業もある。代表的なのは株式会社インソース(証券コード:6200)だ。インソースの研修一覧・講師派遣の検索ページでは、テーマ別、階層別、業界・業種別、部門・職種別、ニーズ別に社員研修が整理されており、大抵の目的には合致するものがみつかりそうだ。

さらに、検索エンジンで「目的」をキーワードにして探してみると、大手の研修機関だけでなく、中小規模の研修機関もたくさんでてくる。まずはインターネットを利用し、できるだけ多く研修機関の情報を収集するといいだろう。

研修機関の選別

目的を達成するための社外研修機関へに依頼について、大きく以下の2つになるだろう。

  • いくつかの分野についてまとめて1カ所の研修機関に依頼
  • 分野ごとに複数の研修機関に依頼

例えば、過去からの付き合いで、社内事情に通じた研修機関があれば、そこにさまざまな分野の研修を依頼することもできる。ただし、どれだけ大手の研修機関であっても、それぞれ得意分野・不得意分野があるのは間違いない。

支払う料金が極端に違わなければ、なるべく多くの研修機関を検討し、依頼する研修内容を得意としている研修機関を選ぶに越したことはない。研修目的と、依頼する研修内容を研修機関に提示し、提出された講師の略歴や講義内容を基に比較検討する。

講師との打合わせ

依頼する研修機関が決まったら、研修内容や方針などを打合わせするため、研修前に講師と面談を行うのがお勧めだ。会社側の要望を講師に伝え、研修に参加する社員の年齢層や基礎知識に適応した研修かどうかを事前に確認できると理想的。

よくある失敗例は、研修に参加した社員が「期待はずれだった」「難しくて何を言っているのか理解できなかった」といった不満をもたらすことだ。こうなると、会社、社員、講師、研修機関の誰も得しない。このようなことを防ぐための最も効果的な方法が講師との面談だ。

報告書を提出させる

研修後は、「やりっぱなし」にせず、社員に受講報告書を提出させる。報告書に記載したもらう内容は、主に以下の4つ。

  1. 研修に参加した総評
  2. 研修の概要
  3. 研修から得た自分の課題
  4. 今後の具体的な対応策

研修で得た知識やノウハウをそのままにしておくだけでは、あっという間に忘れてしまう。社員が報告書を記述し、記録として残すことにより、社員自身が研修内容を整理でき、ある程度の知識の定着が図れるだろう。

さらに、会社側としては、費用を使った社外研修の効果測定の判断材料にできる。社員にも会社にもメリットがあるのだ。

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