BtoC-EC(消費者向け電子商取引)の現在

デジタル活用
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国内EC市場

初めての起業後、最初に成功した事業は広い意味でのEC(電子商取引)だった。なんと21世紀にはいる直前の話だ。ある意味、スモールビジネス・ベンチャーらしく、これから成長しそうな市場への前向きな挑戦だった。

実際にビジネスになったのは、当時急成長していた「携帯電話向け公式コンテンツ」の提供と、「インターネットモールへの出店による物販」だ。これを現在の経済産業省の「BtoC-EC市場」定義に当てはめると、前者は『デジタル系分野』、後者は『物販系分野』となるようだ。

今では、「ネットで買う」のはまったく普通のことだが、EC黎明期の2000年前後を経験した者から見ると、当時のインターネット上のサービスは使い勝手がイマイチで、コストが高く、信頼性は低かったため、ここまで発展するとは思えなかった。なにしろ、個人情報の保護に関する法律ができたのは2003年だ。決済手段もクレジットカードしかない。それ以前に「ネットで買う」のは怪しさ満載で、普通に考えて不安だったに違いない。

今では誰もが利用する「Amazon」は書籍しか扱わず、6年間の大赤字を経て、2003年に初めて黒字化した。2万人以上の社員を抱え、1兆5000億円近い売上を誇る「楽天」も、2003年は社員260人、売上30億円だったようだ。

今さらではあるが、B2CーEC(電子商取引)をちゃんと知っておいて損はしないはずだ。

ECの定義と利点

ECは和製英語で、エレクトロニック・コマースのことだ。「電子商取引」と訳されている。

その定義づけは場合によって異なるが、通常のECの定義は、インターネットを利用して商取引を電子化し、ビジネスチャンスの拡大や取引の効率化を目的とする手段といえるだろう。ECの範囲としては、広告宣伝や注文書・請求書のやり取りから代金決済に至るまでの商取引のすべてのプロセスが含まれまる。

「商取引における電子的データのやり取り」という意味では、特定企業間などでの専用回線を利用した「EDI(Electronic Data Interchange)」も含めるという考え方もあるようだ。このコラムではEDIを含めず、インターネットを利用したコンピューターネットワークシステムの中で成立する商取引のことをECと呼ぼう。

商取引の通信手段としてインターネットが優れているのは以下の3点だろう。

  • 安価に利用できる
  • 個人から企業、政府、学校といったすべての機関に平等に開かれている
  • コミュニケーションは双方向・リアルタイムで行われる

しかし、インターネットは安価でオープンなコミュニケーション手段であるがゆえに、問題も抱えている。最も重要な問題は情報セキュリティだ。ECの発展は、セキュリティ問題の解決が必須条件であるといって過言ではない。

B2C・B2B・C2C

ECは誰かと誰かの取引なので、それを用いて3種類に分けられる。その「誰か」を、B=企業などの事業者、C=消費者とすると、以下の3つの組合せができる

B2C:企業が消費者を相手に行うもの
「B to C EC(Business to Consumer EC)」

B2B:企業が企業を相手に行うもの
「B to B EC(Business to Business EC)」

C2C:消費者が消費者を相手に行うもの
「C to C EC(Consumer to Consumer EC)」

B2Cの代表格は、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングだ。C2Cの代表格は、メルカリやラクマなどのフリマとヤフオク!などのネットオークションであろう。

国内ECの市場規模

2020年に経済産業省が国内ECの市場規模について調査結果を発表している。『令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)』という報告書だ。

この報告書によると令和元年の日本国内のEC市場は以下の規模だそうだ。

BtoC-EC(消費者向け電子商取引)
市場規模は、19.4兆円(前年18.0兆円、前年比7.65%増)

BtoB-EC(企業間電子商取引)
市場規模は、353.0兆円(前年344.2兆円、前年比2.5%増)

CtoC-EC(消費者間電子商取引)
市場規模は、1兆7,407億円(前年1兆5,891億円、前年比9.5%増)

B2B(企業間電子商取引)の伸びは2.5%だが、その絶対値である353兆円という数字には驚かされる。企業は今まさに「DX(デジタル革命)」推進の真っただ中なので、今後さらにこの数字が大きく伸びることになるかもしれない。

B to C – EC

企業や店舗といった事業者が一般消費者を相手に行う「BtoCーEC」の代表的なものとして、「オンライン・ショップ」がある。オンライン・ショップを簡単にいえば、インターネットを利用した通信販売だ。

企業や店舗はWebサイト(ホームページ)に販売したい商品を掲載する。そのWebサイトをみて商品が欲しいと思った顧客は、オンラインでフォームに書き込むなどして注文し、企業はその注文情報を受け取る。

オンライン・ショップは、消費者にとってはオフィスや家庭にいながら24時間いつでも買い物ができるという利便性があり、企業にとっても販売機会の増大や資本の大小・地理的条件に関係なく自由に参加できるという利点がある。こうした「オンライン・ショップ」のシステムを代行してサイトを構築したり、システムを期間貸しする業者も多いため、企業や店舗がオンライン・ショップを開設することは極めて安価で簡単になった。

さらに、自分でオンライン・ショップを開設しなくても、Amazonや楽天、Yahoo!ショッピングに店舗を出店するという選択肢もある。こういった「インターネット総合ショッピングモール」に出店するメリットは、モール運営側がインターネット利用者、つまり顧客を集めるさまざまな工夫を行っていることが大きい。もちろん、決済や物流、ポイントプログラムなどをモールが提供してくれる点も魅力的だ。

BtoCーECの市場

前述した経済産業省の2020年報告書によれば、2019年のBtoCーECの市場規模は19.4兆円だった。同報告書では『EC化率』という指標を示しており、BtoCーECのEC化率は、6.76%と計算された。ちなみに、この報告書におけるEC化率とは、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を指す。BtoC-ECにおいては『物販系分野』を対象として算出しているらしい。

経済産業省の報告書で公開されているBtoCーECの市場規模とEC化率の推移は以下の通りだ。

引用:経済産業省『令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)』P6

冒頭に書いた通り、起業後にビジネスとして「BtoC-EC」市場で提供していたのは『デジタル系分野』と『物販系分野』だった。その当時、成長が期待されていたのは『デジタル系分野』。デジタル系分野とは、書籍や音楽、ソフトウェアなどのデジタルデータやニュース、映像の配信、情報検索サービスなどで、消費者は自宅に居ながらにして商品やサービスを受け取ることが可能であり、それが大きく伸長するだろうと予想されていた。

それから20年後にどうなっているかを経済産業省の同じ報告書(P30)で見てみよう。

上記の円グラフの通り、成長が期待されていた『デジタル系分野』の構成比率は、BtoC-EC市場の1割程度だ。半分以上が『物販系分野』という調査結果だった。

さらに、上記3分野の伸び率を見ても、物販系=8.09%、サービス系=7.89%と、大きな比率を占める2分野が8%前後なのに対し、デジタル系=5.11%であり、今後も構成比率がますます小さくなるのではないかと考えられる。

スマホ・アクセスの急伸

従来、インターネットに接続する端末はPCが主流だった。「BtoC-EC」の利用者の大半は「ネットで買う」ためにPCを使っていた。その後、携帯電話(いわゆるフューチャーフォン)やゲーム機、デジタル家電など、インターネット接続の端末が多様化した。

なかでもインターネットに接続可能な携帯電話の普及と、その通信スピードが高速になり、定額接続サービスが開始されたことなどが「BtoC-EC」市場を活性化しているのは間違いないだろう。

経済産業省の同じ報告書(P38)には、スマートフォン経由の市場規模の推移も記載があるので、それを見てみよう。

引用:経済産業省『令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)』P38

推移を見ると、2015年にはスマートフォン経由の利用者の割合が3割未満であったことが分かる。2019年は4割を超え、このまま線を延長してみると2023年頃には半数以上がスマートフォン経由でECを利用しそうだと推察できる。

成長の理由としては、スマートフォンアプリの利便性の高さや、スマートフォンを利用してのマーケティング施策の発展(SNSやプッシュ通知など)が考えられる。今では、世代を問わずスマートフォン利用者数が増加しており、この傾向はしばらく終わりそうもない。

何が売れているのか

「BtoC-EC市場」に関しては、自分自身も消費者だ。普段は医薬品を買ったり、スニーカーを買ったり、新幹線のチケット予約をしたりしている。経済産業省の報告書には、「BtoC-EC市場」の3分野について、更に内容を分類し、その市場規模について、昨年比やEC化率とともに示してある。

市場規模やEC化率の具体的な数字については報告書に任せるとして、ここでは、各分野の「トップ5」を見ることにする。

物販系分野のトップ5

経済産業省の報告書(P58)から、物販系分野の市場規模の内訳をみると、「衣類・服装雑貨等」(1兆9,100億円)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(1兆8,239億円)、「食品、飲料、酒類」(1兆8,233億円)が大きな割合を占めている。トップ5は以下の通りだ。

  1. 衣類・服装雑貨等
  2. 生活家電、AV機器、PC・周辺機器等
  3. 食品、飲料、酒類
  4. 生活雑貨、家具、インテリア
  5. 書籍、映像・音楽ソフト

上記5カテゴリー合計で、物販系分野の85%を占めている。

サービス系分野のトップ5

経済産業省の報告書(P63)から、サービス系分野の市場規模の内訳をみると、「旅行サービス」(3兆8,971億円)が大きな割合を占めていることが分かる。トップ5は以下の通りだ。

  1. 旅行サービス
  2. 飲食サービス
  3. 理美容サービス
  4. 金融サービス
  5. チケット販売

以前は電話予約が普通だったが、今ではどのサービスもネット予約が当たり前になっている。特に旅行市場でのインターネット活用は、海外・国内ともに非常に盛んだ。

デジタル系分野のトップ5

経済産業省の報告書(P68)から、デジタル系分野の市場規模の内訳をみると、「オンラインゲーム」(1兆3,914億円)が大きな割合を占めている。トップ5は以下の通り。

  1. オンラインゲーム
  2. 電子出版
  3. 有料動画配信
  4. 有料音楽配信
  5. その他

今の若い世代はテレビをほとんど観ない。DVDを買ったり、CDを聴くこともない。スマートフォンでのオンラインゲーム、オンライン漫画、オンライン動画、ダウンロードされた音源を楽しむのが普通の光景だ。

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