肥満のこと【7】ダイエットの敵と運動療法

心身の健康
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ダイエットの敵4つ

ダイエットの「敵」としてよく挙げられるのは、清涼飲料水やお菓子、そして米・パン・麺類だ。だから糖類や炭水化物をコントロールしようという話になるのだが、ここでは少し視点を変えて、冷え/早食い/ストレス/お酒と外食の4つのテーマでダイエットの敵をみていこう。

冷え

「冷え性」は、季節を問わず、手足や腰、関節など体の一部に冷えを感じるのが特徴。手足が冷たい、体がむくむといった症状の他に、めまいや立ちくらみをともなったり、イライラしたり気力がなくなったりと、精神面にまで影響することがある。

体が冷えると、血液の流れを調節する自律神経の働きがにぶる。すると、血管の少ない腰や手足の先へ行く血液の量が減り、冷たく感じる。それだけでなく、血液の流れが悪いと、内臓の働きも低下する。体の中で熱を作る働きもにぶり、体のエネルギー消費量の半分以上を使っている基礎代謝が低下してしまう。そのまま放っておくと基礎代謝は低下する一方だ。その結果、たいして食べていなくても太ってしまうという状況に陥ってしまう。

では、「冷え」を撃退するにはどうするか。まずは自分の「冷え」の原因を知ることから始める。

「冷え」の大きな原因は、2つに分かれるという。ひとつは、生活習慣。たとえば、間違ったダイエット方法。低カロリーだからと生野菜ばかり食べたり、水をたくさん飲んだりしていると、実は体を冷やして、逆に自分の体を太りやすくしていることもあるという。もうひとつは、運動不足による筋力不足という原因。熱は筋肉で作られる。男性に比べてもともと筋肉の少ない女性が冷え性になりやすいのはこのせいだ。また、ストレスも「冷え」の大きな要因。ストレスがたまると、手足の先の毛細血管が収縮し、血行が悪くなり、結果的に体の中が冷えて、さまざまなトラブルを引き起こすことが分かっている。

まず、自分の「冷え」の原因をつかむことが大切だ。原因がわかれば、それをとりのぞいて体を内からも外からも温めればいい。体の中から「冷え」を追い出し、脂肪をしっかり燃やす、やせやすい体質になることを目指そう。

早食い

太り気味の人に多い癖が早食いだ。本人は自覚していないことが多いが、早食いの人は口の中に食べ物が残っている状態のままで、次から次へと食べ物を口に運んでいる。このため、よく噛まないまま飲み込むことが多くなり、短時間で多くの量を食べることになる。

早食いを直す方法としては、一口分を口に入れたらハシを食卓に置き、良く噛んで飲み込んでからふたたびハシを取るようにすることがいいと言われる。噛んでいる間は手は膝に置いておく。極めて単純な話だが、長年早食いを続けてきた場合、頭で理解できても、実際に試してみると意外なほど難しい。食べはじめて数分たつとハシを置くことをスッカリ忘れてしまうのだ。ある国民的有名人は、噛む回数を何10回と決めて、食卓の壁に回数を書いた紙を貼り、数えながら食事するそうだ。

良く噛んでゆっくりと食べることに成功すれば、食事が終わる前に満腹感が得られることに気づくという。早食いではとても満腹感が得られない量で満足できるため、食事の量を自然に減らすことができる。

また、早食い防止ではないが、副菜は家族全員分を大皿に盛るのではなく、自分用の皿に盛り付けるのもアイデアだ。そして、食事が終わったら、食卓の上を片付けてしまう。食べ残しを置いたまま話をしていると、ふたたび食べてしまう恐れがあるからだ。ついでに、買い出しは食後に行うのもポイント。空腹時に買い出しに出かけると、つい余計なものまで買ってしまう。

ストレス

肥満の原因となっている行動様式や反応の仕方を改めるものとして「行動療法」というのがある。

その行動療法の基本的なプログラムに「契約」というものがある。減量の指導にあたっている医師や栄養士と約束ごとを作って、細かい条件までを定めた「契約書」を作成するのだ。契約書の内容は、たとえば2か月で5キロ減量するなどと決め、患者が2万円を出資して2か月後に1キロの減量分につき5千円を返却してもらうといった具合。5キロの減量に成功したら、ボーナスとして患者は医師からちょっとしたプレゼントをもらえることにしてもよいだろう。

「契約」後に間食の回数が減るなど、大きな進展が見られた時、タイミングよくご褒美を出すことで、本人にやる気を起こさせる。自分が成し遂げたことに対してご褒美がもらえることで、途中で投げ出すのを防ぐ効果がある。

「行動療法」 は、ストレスによる過食を防ぐ目的でも使える。人間は、悩みや心配ごとがある時、緊張している時、退屈な時、怒っている時につい食べ過ぎてしまう生き物だ。その対策として、食べるかわりにやるといいことを箇条書きにしておくという方法がある。心配ごとがあるときは特定の友人に電話するとか、緊張したらネットショッピングする、アタマに来たときはコメディ映画を鑑賞するなど、最初からストレス解消法をリストアップしておくのだ。もちろん、普段から、できるだけストレスをためないよう心がけ、食べずにストレスを解消する習慣が身についていればそれに越したことはない。

行動療法では、家族や友人などの理解と協力が大きな助けになるという。特に家族とは減量を始める前にじっくりと話し合うとよいだろう。家族の応援や励ましの言葉がある場合と、無い場合では非常に大きな違いがある。

お酒と外食

人間ドック後の、減量のための生活改善指導では、必ずお酒の話がでる。アルコールのエネルギー量が思いのほか高いからだ。目安として、ビール中ビン1本弱、ウイスキーのシングル2杯、日本酒小徳利1本、ワインのグラス1杯が、茶碗一杯分の米飯と同じだということを指導員から何度も聞いた。飲む場合はこの量に留めるようにという指導だ。この量なら160キロカロリーで収まるらしい。

酒の肴にも気を付けなければいけない。油っこい料理などを思いのまま食べていたら、一日の摂取エネルギーの大半を占めるほどになる。また、チーズやピーナッツ、チョコレートなども少量で高エネルギーだ。アルコールには食欲増進作用があり、つい自制心を失って食べてしまうということがある。

お酒に関する減量のための生活改善指導では、どうしても飲まなければならないなら、「醸造酒ではなく蒸留酒」と言われた。ビール・ワイン・日本酒が醸造酒で、ウィスキー・焼酎が蒸留酒だ。糖質の量がまったく異なることが理由だとのこと。

外食もダイエットの大敵と言われる。外食の問題点は高エネルギーの献立が多く、野菜やタンパク質が足りずに栄養バランスがとれないこと。対策として、外食は一日一食までにすると決めたり、外食の必要がある場合は、メニューの選び方によって極力バランスをとることが挙げられる。

丼物や麺類などの単品料理は手軽だが、糖質や脂質に偏りがちなのでダイエットにはよくない。とはいえ、選択肢が他にない場合は、具が多いものを選ぶようにする。単品よりは野菜、汁物のついた定食の方が好ましく、特に刺身定食や焼魚定食などがダイエットには最適。野菜が足りないときにはお浸しなどを付け加える。油や砂糖を多く使う洋食、中華料理はできるだけ避ける。

一般的に、外食のメニューは量が多めになっている。ダイエットするなら、米飯を少なめにしてもらったり、おかずを残すなどして調節する必要がある。


無理なく出来る運動療法

ダイエットのための運動は2タイプに分けられる。移動を伴う「動的運動」と、一ケ所にとどまって筋肉運動を主に行なう「静的運動」だ。

一番手軽にできる動的運動がウォーキング。ダイエット目的なら1日30分という説もあれば、午前と午後に20分ずつのウォーキングを行なうとよいという説もある。ウォーキングのためだけに時間がとれないという場合は、例えば、ひと駅だけ歩くとか、遠回りして買い物に行くといった工夫をし、無理なく確実なところから始める。

歩く速度は、ゆっくり歩き(時速3キロ程度)よりも少し速い時速4~5キロが目安。ダイエットに限らず、速く歩くことができる人ほど健康寿命が長いという調査結果があるくらいなので、無理のない範囲で徐々に速く歩けるようにするとよいだろう。

大切なのは速く歩くことではなく無理な力のかからないフォームをとることだといわれている。アゴを引いて背筋をのばす、カカトから着地して足の裏全体を使い、つま先で前に押し出すようにして歩く、腕は自然に振る、リラックスするなどが主なポイントだ。

身体に余計な負担をかけないためには、靴選びも重要。適度なクッション性があり、足にフィットするものを選ぶ。短時間のウォーキングでも、始める前に柔軟体操などのウォームアップすることも大切。 ウォームアップにより血液循環を促し、膝や足の関節を伸ばして筋肉を温めておくと、安全性を高めることができる。歩き終えた後は筋肉に疲労を残さないようクールダウンするとよい。

ダイエット目的の静的運動としてはウエイト・トレ-ニングが適している。タンベル体操などにより、筋力・持久力をつける。ダンベルがなくても水を入れたペットボトルで代用すれば十分だ。腕立てやスクワットなどは身体ひとつでもできる。朝起床したら、まず軽い柔軟体操をしてウエイト・トレーニングをすることを勧める専門家もいる。心身ともに目覚めて身体の緊張感が高まり、肥満防止につながるらしい。

ダイエット目的の運動は時間、場所、相手の有無に関係なく出来ることが大切。毎日の生活の中に運動を定着させるを考えると、動的運動はウォーキング、静的運動はウエイト・トレ-ニングとヨガのようなものになるだろう。

とにかく歩こう

ここまで「肥満のこと」として色々なことを書いてきたが、結局は食事と運動だ。肥満体質を作り出すのは、過食と運動不足。この二つが重なると、摂取エネルギーと消費エネルギーの落差が大きくなり、余剰分は脂肪として蓄積される。

車を足代わりにしてほとんど歩かないとか、必要最低限しか身体を動かさない生活は、太りやすい状態を自ら作り出しているということだ。食事への気遣いは極めて重要だが、運動不足を解消しなければ摂取エネルギー過剰の状態は変えられない。運動不足は大切な筋肉が萎縮し、体脂肪を増大させる。スタミナがなくなり、抵抗力が衰え、老化が早まり、結果的に病気を引き起こしやすくなる。

運動により常に刺激を与えることで、体は正常な働きを維持出来る。とはいえ、時々思い出したように激しいスポーツをするのは、故障や事故を起こす恐れがある。何より、健康のための運動は継続しなければ意味がない。運動の効果は1週間もすればほとんど消えてしまうため、持続して行なうことが大切なのだ。

最初は軽い運動から始め、少しずつ強度を高め、あとは継続することを想定しよう。やはりお勧めはウォーキングだ。例えば、朝夕ニ回のウォーキング程度ならすぐに始められるはず。

iPhoneを使っているなら標準アプリ「ヘルスケア」、Androidスマホなら「Google Fit」で一日の歩数がカウントされている。これを見て、一日の歩行数が3000歩を下回るようなら、意識的に身体を動かす工夫をしたほうがいいだろう。時間が許すなら、ちゃんとスポーツウェアに着替えて少し汗ばむくらいの早歩きでのウォーキングを日常生活に組み込むことをお勧めする。

忙しくてなかなか時間がとれない場合は、日常生活のなかで身体を動かす工夫を。車に乗らず歩く、電車・バスを利用するなら一つ手前の駅・停留所で降りて歩く、エレベーターやエスカレーターは利用せずに階段を昇り降りする。ダイエットに効く目安は1日1万歩らしいが、最初は8000歩から無理なく始めてみよう。歩数というより、日常的に身体を動かす習慣(クセ)がつけば儲けもの。

まずはとにかく歩いてみよう。


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