新卒3年目までの効果的な情報整理法

業務改善
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情報整理は社会人の課題

社会に出て仕事をするようになると必ずぶつかる壁がある。「情報化社会」なのか何なのか分からないが、とにかく仕事に関連する情報量が多いのだ。日常の打合せで使われる紙の資料やパワーポイントのデータや、取引先で記録した紙メモやスマホのメモやパンフレット。調査のために集めた各種資料や写真データから見積書、契約書などのコピーなどなど、とにかく量が多い。

「さて、この大量の情報をどうしようか」。何もしないとさばけない量の「情報」という壁にぶつかってしまうのだ。

真偽のほどは定かでないが、10年ほど前、普通に会社勤めしている人のPCの中身を印刷すると、「4トントラック1台分になる」いう話を聞いたことがある。今では安価なクラウド型のデータ保管サービスもあるので、もっと大量になっているのかもしれない。

「整理術」の本は売れる

書店で平積みになっている売れ筋の本や、書棚を見ると明らかだが、「整理術」の本はどうやら売れるようだ。社会人向けの情報整理術には、たいていの場合、「仕事力が向上する」「生産性があがる」「1日3時間の余裕ができる」「ミスがなくなる」などのサブタイトルがついている。つまり、情報をどのように整理するかは、社会人共通の課題だということだ。

爆発的に売れたという記憶のある整理術の本が、野口悠紀雄著『「超」整理法』と、『佐藤可士和の超整理術』だ。前者は元官僚の大学教授、後者はクリエイターで、まったく異なる職種だが、一流の仕事人は独自の整理法・整理術をもち、それによって良い仕事を成し遂げている。

情報にはさまざまな種類がある。書類に書いてある文字のほか、動画などの音声や画像も情報だ。さらに人の話している声も情報。社会に出て最初の3年くらいは、毎日が目新しい情報のはず。いままで見聞きしたことのない情報が多く、それらを体系的に整理できなければ、そこから取捨選択することも、それら情報を有効に活用することもできない。

情報整理は、最終的にはそれぞれの個人が「自分にあった方法」を見つければよい。とはいえ、そこに至るまでに、ある程度の基本的な情報整理法を試してみたほうが大きく飛躍できるはずだ。今回は、新卒3年目くらいまでを想定して、効果的に情報整理する方法を考えてみたい。

情報の種類

情報の種類には、視覚で確認できる「文字・画像情報」、聴覚で確認できる「音声情報」とに大きく分けることができる。

「文字・画像情報」に関しては、書類、新聞などが挙げられる。インターネット上のデジタル情報やスマホカメラで撮影した写真なども「文字・画像情報」といえるだろう。普通の社会人にとってこれらの情報は、仕事にはまったく関係のないものもあれば、仕事に直接関係する情報もある。

仕事に関係ないものは自己啓発のために目を通したり記憶の端に留めておく程度で構わないが、仕事に直接関係する情報に関しては、いつでも参照できるようにしておくことが重要だ。特に書類に関しては重要かそうでないかを十分に注意して整理しておく必要がある。

一方、音声情報に関しては、テレビや動画サイトから聞こえる音声もあれば、会社の上司や同僚から聞く「生の声」もある。重要と思われることは必ずメモを取るようにして忘れないようにすることが大切となるだろう。

整理方法

今では新聞もデジタル化されているので、記事検索で済む内容は整理の対象外だ。とはいえ、最初のうちは新聞で必要と思われる情報は、コピーをとったり切り抜いておくなどして、スクラップブックに整理してみるといい。その際、出所となった資料の「名称」「日付」「ページ数」などは必ず分かるようにしてみる。また書類に関しても同様で「いつどこで受け取ったのか」を分かるようにすることが大事だ。つまり「あとから探す」ことが容易になるように整理するのが望ましい。

音声情報に関しては、そのときは記憶したと思っても後で忘れてしまうことが多くある。全て録音するという手法は「あとから探す」には時間がかかりすぎる。音声にはメモが有効だ。メモは紙でもスマホでも構わない。特に上司から言われた「生の声」は重要なことが多い。単に「○○商事向けの提案書作成」などとメモを取らず、「○月○日までに○○商事向けの商品○○に関する提案書(他社事例、価格表添付)」などと詳細なメモを残すようにしてみよう。

音声で忘れがちなのは電話の内容。特に新卒の場合、相手先と電話しているときに自分が確認したいことのみに集中してしまい、相手先が投げかけてきた質問や確認事項をメモしないのをよく見かける。電話では必ず「相手の名前」「相手の言ったこと」「自分が話したこと」などをメモしながら話すといい。その上で重要なポイントをメモする。

情報整理の場所と保管法

■情報は整理場所が重要

新卒に限らず、情報の量が多いと、書類を取っておいたりメモを残しておくなど、さまざまな情報を記録していくと「どこに何があるのか」ということが分からなくなる。全てがネット上にあれば、検索エンジンを使えばいい。全てがPCの内部にあれば、PC内検索をすればいい。

自宅で洋服を整理する場合、セーター、ズボン、下着の収納場所は決まっている。またお金の場合、普段使わないお金は金融機関の口座に、いざというときに備えて自宅には現金を、普段使うお金は財布の中にといった具合に、お金をしまっておく場所も決まっている。

情報の整理に関しても同様だ。「どこに、何を整理しておくのか」ということをきちんと決めておけば、後で見つからなくなるということもなくなるはず。PCでも書棚でもデスクの引き出しでもいいが、場所を最初に決めておこう。最初は「いつでも取り出せる」環境をつくること。

■情報の保管方法

情報の保管方法は、職種や部署によって大きく異なるが、どんな職種や部署においても基本的な分類は共通している。例えば営業職の場合、次のように分類すると混乱がないだろう。

1. 進行中の情報

  • 営業関係:営業先資料、カタログ、スケジュール表、確認事項、問合せ内容、電話内容メモ、収集資料
  • 作成書類関係:報告書、企画書、提案書、見積り書

2. 保存すべき情報

  • 顧客管理:得意先リスト、見積り書、受注書、請求書
  • 営業管理:見込み先リスト、提案書、営業ツール
  • 取引先管理:外注先リスト、見積り書、発注書、請求書
  • 商品(サービス)管理:商品アイテム一覧、価格表、自社カタログ、他社カタログ
  • 社内業務管理:各部署・支店の連絡先リスト、端末の操作方法、報告書
  • 企画・会議管理:プレゼンテーション、企画書、会議書類、議事記録
  • その他:地図、手紙の書き方、アイデア集、総務関係書類、回覧

上記例のポイントは、「現在進行中のもの」と、「保存しておくもの」とを分けることだ。現在進行中のものを別にしておくことによって、「いま自分はどの程度の仕事を抱えているのか」ということが明確になる。現在進行中のものを「うっかり忘れていた」というミスを防ぐことができる。

それぞれの項目に対して、書類を整理できるファイルを最初から用意し、そこに新しい情報を追加していけばいい。後から参照すすのにも好都合だ。その際、それぞれの情報には必ず「日付」「入手先」「使用目的」などを記載する。デジタルデータであれば、ファイル名に追記する方法もある。

せっかく保存しておいた情報も「いつどこで得たもので何に使うのか」が分からなければ意味がない。情報を部門の共有場所に置く場合は、自分が会社にいないときや休んでいるときにも混乱がないように、誰が見ても分かりやすくしておくことが重要だ。

いくらきちんと管理しておいても、時間の経過によって必要でない書類も出てくる。入社3年目までくらいなら、1カ月に1度くらいは情報の整理を行い、あきらかに不要なものは捨てるようにしよう。先ほど紹介したベストセラー野口悠紀雄著『「超」整理法』には、不要なファイルが「自動的に押し出される」ことが書いてあるが、それは本格的に多忙を極めるようになってから読んだ方が効果的だ。


情報の収集方法

情報をきちんと整理し、保管場所を決めただけでは情報を有効に活用しているとはいえない。それぞれの情報をいつでも引き出せるようにしておくことは最初の一歩。

社会人になると、先輩や上司から「○○に関して調べてくれ」と言われることが多いはず。こういう状況になったとき、適切な情報を探し出すことも求められる。整理した情報の範囲で調べられるものならいいが、たいていは別の情報を収集しなければいけなくなる。そこで、情報の収集方法に対する基本を説明する。

何を調べるのか明白にする

例えば、「○○商事向けの提案書を今週中に作成してくれ。市場動向や他社商品との比較も盛り込んでくれよ」と頼まれたとしよう。ここで必要となる情報は、「提案書に記載する自社商品の情報・価格」「市場動向」「他社商品の情報」となる。

情報収集の基本は、必要とする情報がどこにあるかを知ることから始まる。求める情報の所在を確認したうえで、情報収集を行う。

まず社内で得られる情報(自社社員、インターネット、書類、新聞、ビジネス誌など)を調べ、その後社外で得られる情報(書店、図書館、関連団体、取引先など)を利用することが基本となる。場合によっては他社商品の情報を知るために直接他社に電話したり、他社が開催しているオンラインセミナーなどに参加することもあるだろう。もちろん、そういった場合は、上司に確認をとった上で電話するようにする。

どこに情報があるのか分からないとき

上司に依頼されて情報を収集する際、どこに存在するのかまったく分からないときがある。そもそもその情報が存在するのか分からないこともある。依頼した上司もインターネットで軽く検索くらいはするだろうから、それで見つからないような情報だ。

社内で先輩・同僚や他の部署に聞いても分からず、インターネットの検索エンジンで複合検索などのオプション検索のテクニックを駆使して調べても見つからなかったとする。その場合、上司には単に「見つかりませんでした」と報告するのではなく、ここまでの情報収集の経緯を話したうえで見つからなかったことを報告するほうがいい。賢明な上司であれば、ここまでの経緯から、次のステップを考えるだろう。上司が次を考えるための情報は貴重なもの。

例えば「ホテル向けのトイレットペーパーの市場動向」情報の収集を依頼され、調べた結果、ホテル向けの市場データは存在しなかったとしよう。しかし情報収集の過程で業務用トイレットペーパーのデータがあったとすれば、「ホテル向けのデータはありませんでしたが業務用データはありましたので報告します」とすべきだろう。

この場合、さらに製紙関連団体などに電話で確認をして、「業務用トイレットペーパーのうち何%程度がホテル向けなのか」というのを問合せてみて、その団体のヒアリング結果を付加して報告できれば当初の目的にうんと近づく。

社会人になって年数が経つほど、「本当に欲しい情報はネット上にはない」ことに気付くはずだ。

PCを利用した情報管理

まずは共有データを

一般の企業であれば、全社員が共有できる顧客情報、商品情報、ひな型、報告書などがあるはず。それらはたとえ自分の業務と直接関係がなくても、いつでも検索し活用できるようにしておくといい。そうすることによって上司の仕事を引き継いだときや他の部署に移籍したときもすんなりと情報を得ることができる。

また指示をされていなくても、自分専用のデータベースは用意しておきたい。エクセルなどの表形式のデータで構わない。とにかくできることから始めよう。

自分専用のデータベースの作成

自分専用のデータベースを作成する際のコツは、万が一他の社員が見ても分かりやすくしておくこと。例えばエクセルで管理する場合「スケジュール管理表」「自分の担当する顧客(商品)データ」「住所録」「問い合わせ先リスト」などのシートを作成しておくと便利だろう。

PCについても書類と同じように分かりやすく情報を整理しておかないと分かりにくくなる。前述したような「進行中」「顧客管理」「営業管理」「社内業務管理」というフォルダを用意し、それぞれのフォルダの中もサブフォルダを用意して、別の社員が見ても分かりやすくしておくことが大切。

先んずれば人を制す

先述の通り、情報整理は社会人の課題だ。会社の先輩も上司も、うまく情報整理ができれば、生産性もあがるし、仕事ができるようになることを感じているはず。だから整理術の本が売れる。本を買っているのは経験豊富なビジネスマンなのだ。

「先んずれば人を制す」という故事成語は、何事も人より先に行えば有利な立場に立てるということを意味する。自分なりの情報整理法を身に着けのが早ければ早いほど、今の「高度情報化社会」では優位に立てる可能性が高くなる。

目標を持って取り組む

いくらうまく情報の整理を行うことができたとしても、それを作成するのに大変な労力や時間をかけていたら意味がない。自分では短時間で効率的な情報管理を行っていると思っていても、上司や先輩からみればまだまだ不手際が多く、改善の余地があることも多いはず。

大切なのは、きちんと目標を定めて、短時間で正確に処理していくこと。そのためには、現在行っている手順で間違いがないかを上司や先輩に確認するとともに、1つ1つの仕事に対してやりがいを感じながら、しっかりと納期に間に合うように業務を進めることが求められる。

やる気さえあれば結果があとから付いてくると考えた方がいい。上司や先輩もやる気のある若手社員にはいろいろなことを教えてくれるはず。モチベーションを維持するためにも、自分なりの目標設定は非常に大切といえる。

分からないことは聞く、同じ過ちを繰り返さない

どんな仕事に対しても、自分1人で考えて処理していくことは大切なこと。しかし、悩みぬいた挙句に納期に間に合わなかったり間違いをしていたら意味がない。

少し悩んでどのようにすればよいか迷ったときには、すぐに上司や先輩に聞くようにしよう。一度聞いたことは次回自分1人でやれるようにすること。やり方を聞いたときはなんとなく分かっていても、期間が経つと忘れてしまうもの。できれば、自分なりにシミュレーションしてみるなど、一度説明を受けただけで満足しないで、なぜこのように処理を行うのかを理解しながら進めることが大切だ。

上司や先輩も多忙な場合が多い。相談して仕事の手順を聞くときは、時間があまりないという前提で考えよう。まずは手順だけを聞いて早急に仕事をこなし、時間が空いたときになぜこのような手順を踏まなければならないのかを聞いてみるなどの配慮も念頭におくといいだろう。


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