転換社債:CB
CB(シービー)と呼ばれる金融商品を知っているだろうか。正式には、転換社債型新株予約権付社債(Convertible Bond)だが、漢字13文字と長いので、転換社債やCBと呼ぶことが多い。転換社債は、発行時に決められた一定の条件(転換価格)で「株式に転換できる社債」のことをいう。つまり、以下の2つの顔を持った金融商品だと言える
- 転換価格で株式に転換することができる
- 社債として安定した利息が受け取れ、満期時には額面金額が戻る
社債は比較的「安全」といわれるが、当然のこととして、その社債の発行者企業が倒産した場合は、債務不履行に陥る危険性がある。今回は転換社債について簡単にまとめてみたい。
転換社債の値動き
株価が値上がりすれば、基本的に転換社債の価格も連動して上がる。これは、転換社債がいつでも決められた価格で株式に転換できる権利をもっており、株価が転換価格を上回って値上がりすればするほど転換社債の価値も上がるからだ。
一方、転換社債は株価が値下がりしても、株価にそのまま連動して値下がりし続けるわけではない。これは、転換社債の価格が下がってくるとその利回りが上昇してくるため、今度は債権としての魅力が高まり、買いが入るようになるからだ。つまり、社債としての価値(利回り)が転換社債の値下がりの歯止めになるというわけだ。
転換社債の4つの魅力
金融商品としての転換社債には様々なメリットがあるが、ここでは主な魅力を4つ挙げてみる。
値上がりしたら社債のまま売却
株価が値上がりすると転換社債も連動して上がるため、社債のまま売却しても値上がり益を得ることができる。そのほか、転換社債を売却するまでの利息も受け取ることができる。
社債として満期時まで保有
株価が思うように値上がりしない場合、社債として満期時まで保有すると、それまでの期間毎年きちんと利息が受け取れるし、発行企業が倒産しない限り満期時には額面金額が戻ってくる。
とはいえ、安全性と高利回りを求めるのであれば、一般社債や国債などの中にもっと有利になるものがあるかもしれない。そのような場合、満期まで持ち続けるつもりで新たに発行された転換社債(新発債)を購入することは、必ずしも有利とはいえない。
しかし既に発行され、取引所で売買されている転換社債(既発債)の中には、株価が値下がりしたために転換社債の値段が額面より下がっているものもある。これを「アンダーパー」という。このような既発転換社債であれば、満期まで持ち続けたほうが有利だろう。
また、満期まで持つつもりでアンダーパーの既発転換社債を購入した場合でも、株価が大幅に値上がりしますと転換社債の値段が額面を上回って上がることがしばしば起こる。これは「オーバーパー」という。そういう場合には、満期を待たずに売却しても、最初の見込みよりはるかに有利な結果が得られる。
機会をみて株式に転換して売却
株価が値上がりすると転換社債も連動して値上がりするが、転換社債のまま売却するのと、株式に転換してから売却するのとではどちらが有利なのだろうか。転換社債の時価が、理論どおり株価と並行して動くならばどちらでも同じだが、株式に転換してから売却するほうが有利な場合もある。
それは、転換社債の時価が理論価格より安い場合だ。理論価格を「パリティ」という。このパリティの説明をしておこう。
例えば、転換価格2000円のA社の転換社債を額面200万円保有している場合、A社の株式1000株に転換することができる。この1000株を株式市場で売却するとした場合、仮に株価が転換価格と同じ2000円であるとすると、手数料などを無視すれば、株式売却で得られる金額は額面金額と同じ200万円になる。
しかし、もし株価が転換価格より30%高い2600円とすると、1000株の売却代金も額面金額より30%多い260万円になります。このとき、転換社債の価格は額面200万円に対し260万円の価値を持つので、理論的に1単位の額面価格は100円より30%高い130円になって当然と考えられる。このように株価と転換価格の関係から生まれる転換社債の株式としての価値を「パリティ」と呼び、このケースの場合、パリティの価格は130円ということになる。
機会をみて株式に転換して持ち続ける
株式に換えて持ち続けることにより、株式投資の妙味が楽しめる。株式に換えれば、今度は「株主」になるわけなので、以下の3つの「株主の楽しみ」を味わえる可能性がある。
- 配当金が受け取れる
- 株価の値上がりが期待できる
- 株主優待が受けられる
転換社債の購入方法
転換社債の購入方法には、以下の2通りがある。
- 新しく発行されるもの(新発債)を買う方法
- 既に発行され証券取引所で売買されているもの(既発債=上場債)を買う方法
各々をみてみよう
新発債の購入
新しく発行される転換社債が新発債だ。新発債は、証券会社を窓口として一般募集されるので、購入を希望される場合は証券会社にて申し込む。
既発債の購入
上場企業が発行した転換社債は、通常証券取引所に上場され、自由に売ったり買ったりできる。既発転換社債の売買も、証券会社を通じて行う。なお、転換社債の売買代金の計算は以下の式で表すことができる。
- 買付代金=約定代金+委託手数料(消費税込)+経過利息
- 売付代金=約定代金-委託手数料(消費税込)+経過利息
ただし、
経過利息=額面金額×(利率÷100)×(経過日数÷365)×0.8
(経過日数は直前の利払日の翌日から受渡日までの日数)
転換社債の税制
転換社債を個人で購入する場合と、法人で購入する場合について、ポイントをまとめておく。
個人で購入する場合
- 利金・経過利息に対して:20%(国税15%、地方税5%)の源泉分離課税の対象となる
- 償還差損益に対して:原則として、雑所得として総合課税の対象となる
- 途中売却益に対して:原則として、株式等の譲渡所得として原則10%の申告分離課税となる。ただし、500万円を超えた部分に関しましては20%の申告分離課税となる。なお、損失が生じた場合には、他の株式等の譲渡所得等との損益通算が可能。
なお、上場株式などと同じように「損失の繰越控除制度」や「特定口座の利用」が認められている。
法人で購入する場合
譲渡による利益及び利子、償還により発生する利益については、法人税に係る所得の計算上、益金の額に算入される。法人の場合は、顧問税理士などの専門家に詳細を聞いた方が安全だ。