📓コンサルタントの道具箱ー勇気と自信が持てる16の秘密

自己啓発・研鑽
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ノウハウではなく人生訓

ジェラルド・M・ワインバーグ著/伊豆原弓訳『コンサルタントの道具箱ー勇気と自信がもてる16の秘密』 を紹介しておきたい。 ワインバーグ氏はITシステム開発の関係者には広く知られているコンサルタントだ。

日本で最初に出版されたワインバーグ氏 の著作物は『ライト、ついてますか―問題発見の人間学』という単行本。これを購入して読んだのは学生最後の年で、翻訳者が母校の教授だったため、大学生協の書店に平積みになっていた。

ワインバーグ氏の著書には、システムエンジニアやプログラマなどの技術者向けに、「問題解決」に関わるさまざまな要素をユニークな視点からわかりやすく提示している名著が多い。本書は、自らの経験をもとに、コンサルティングに役立つさまざまな手法について教えてくれる。

著者の「コンサルティングの道具箱」の中には、後述の目次概要に示されているような道具が入っている。「イチゴジャムの法則」や「願いの杖」…この項目を見ただけでは、普通はその道具の見当がつかない。どんなことに、どのように使うのか、少しくらいは興味を覚えるに違いない。

ソフトウエア開発や広くビジネスコンサルティングに応用できるだけでなく、普通に仕事をする場合にも役立つ道具も揃っている。

「勇気の棒」がなければ、新しいことに挑戦し、失敗の危険を冒す勇気は持てなかったという。自分を見る能力を高めるには「鏡」が必要である。これは自分に対するフィードバックを求めて生かす能力。人の意見は自分を映す鏡であり、自分が周りの人たちにどんな影響を与えているかを教えてくれる。

『コンサルタントの道具』というタイトルからは、なんとなくコンサルティングに利用できるフレームワークの話や、個別のノウハウ本かと思われるかもしれないが、中身は人生訓だ。

新しい道具をつくる

イチゴジャムがラズベリージャムと違っているのは、中に粒があることである。粒があると、トーストに塗るとき、薄く広がらない。アメリカのレストランでは、粒のあるイチゴジャムではなく、小さな種すらないペースト状のブドウゼリーを出すようになった。粒のないブドウゼリーは、工場の機械で加工するのに向いているし、客はトーストに塗りやすい。製造コストもイチゴジャムより安いし、品質で文句を言う人はいない。

しかし、メッセージは話し手によって中身が違うように、コンサルティングにも個人の才能が求められる。誰にも無難に喜ばれるようなものであってはならないのだ。マーケティング講座などで、クローン講師軍団の誰でも教えられるように、ビデオを用意し、粒のない概要だけを教えようとするものが増えている。均質だが、薄っぺらなものになってしまう。

知恵の箱の中には、自分の知識の限界を知るべしといったものがいくつか入っている。私が何でも知っているはずはない。それなのに、自分が絶対的な存在であるかのような幻想にとらわれてしまうことがある。この誘惑に負けるたびに、自分はなんて馬鹿なやつなのだと思う。私をだましたプロモーターをはじめ、詐欺師はみんなこの超知恵の原理を知っている。何でも知っているつもりの人間ほど騙しやすいものはない。

一般に、人間は詮索好きなものだが、コンサルタントとは特にそうである。知りたいと思うものを探すには、鍵が要る。コンサルタントは、たくさんの金の鍵を持っており、顧客の内側を知ろうとする。顧客のほうは、知られたくないものもある。逆に、しっかりと中身を見ないで、顧客の考えていることを誤解することも少なくない。

あるとき、システム会社の担当者と顧客とが納期の問題で言い争いになっており、仲裁してくれと頼まれた。なぜ納期が遅れたのかは、顧客側がカタログに載せる部品価格データを期日までに出さなかったせいだとシステム会社は主張、顧客側はそういうデータ提出の期限はなかったと反論し、互いに譲らず、口論が続いていた。私は、もう一度、契約書の条項を見てみるよう勧めた。文書にあった次のような文面を見て、双方がやっぱり自分のほうが正しかったと再び言い合った。

そこには、「カタログ部門は、2月1日までに部品価格データをIT部門に渡すべきである」と書かれていた。問題は、「渡すべき」という言葉にあった。顧客側は、「渡すとは書いてない、渡すべきであると書いてあるとおり努力した」と説明した。

正しいことをするのが怖い場合、逃げ道は、型どおりに行動することである。臆病者の公式によれば、恐怖心があるときは、慣例どおりに行動することとなっている。慣例に従って行動して罰を受けることはほとんどないからである。勇気ある行動をすることにたいていの人が抵抗するのは、単なる安全性の問題からである。

しかし、慣例に従うのならコンサルタントは要らない。残念ながら、どんな場合にもぜったい安全な戦略などというものはない。あるとしたら、その戦略がコンサルタントの「慣例」になっているはずだ。

ウィンストン・チャーチルは、「勇気は人間に必要な第一の資質である。この資質が備わっていれば、ほかの資質も備わるからだ」と語った。だが、この言葉を次のように言い換えると、もっと役にたつはずである。「危険と見返りを落ち着いて正しく評価する能力は、人間に必要な第一の資質である。この資質が備わっていれば、ほかの資質も備わるからだ」。

イエス・ノーをはっきりと言う能力は、コンサルタントに必要だといえるが、実際には難しいことが多い。はっきりとイエス、ノーを言えない理由には、次のような二つの理由がある。

  1. 自分では選択をしないふりをしたいときがある。イエスと言えば、その選択に責任を持たなければならないため、言いたくない。
  2. 人の感情を害したくないために、ノーと言いたくないときがある。

しかし、コンサルタントとして、矛盾もある。依頼主から最初に話がきたときは、イエスとは言わず、ノーとも言うなという「ゴードンの最初のコンサルティングの法則」がある。軽はずみにイエスと言えば、自分には向かない仕事、あるいはやりたくない仕事を引き受けてしまうことになり、ノーと答えれば、依頼主を傷つけたり、仕事のチャンスを失うこともありうる。

この問題を解決する秘訣は、その言い方にある。「そう言っていただいて有難うございます。すこし考えてからお返事させて下さい」「ご依頼の内容を正確に理解できたかどうか、最初からもう一度確かめてみましょう」など。依頼に対するイエスではないが、依頼を理解しようと努めることに対してはイエスというわけである。要求を交渉に変える。

卵は、成長に必要なものを自分の中にすべて持っていることに気づかせてくれる。また、頭に組み込まれた不変な要素などないことを教えてくれる。あるとすれば、「プログラムする能力」だけである。自分の頭を「プログラムする能力」は、どんなプログラミングよりもはるかに偉大な能力である。誰の頭の中にも、数えきれないほどの未知のプログラムが隠されている。これが新しい道具を作るプロセスになる。卵を使えば、自分の道具を生みだすことができる。これはあらゆる変化のプロセスに似たものである。

まず、「ジャイロスコープ」を使って自分の中心を定める。
次に、「鏡」で、現在自分がいる場所を映しだし、自分とのつながりを作る。
また、「願いの杖」と「知恵の箱」を使って自分の行きたい場所を知る。
さらに、「勇気の棒」を握って過去から現在へ移り、「金の鍵」を使って自分に何が可能かを知り、「探偵帽」を使ってそこへたどり着く方法を考える。
困ったことがあれば、レシピに「卵」1個加えればこの言葉が意味するとおり、創造的で変化を起こすアイデアが生まれる。
最後に、「勇気の棒」を使って何度も練習する。これで新しい道具ができあがる。

自分の「問題解決の道具箱」

本書は、著者の前作『コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学』の続編に当たる。前作も本作も解説がユーモラスで文章も軽妙なので、「問題解決」という重いテーマでも、非常に読みやすく、アタマに入りやすい。

ただ、過去のワインバーグ氏の著作もそうだったように、表向きの軽い話題とは違って、内容的には奥が深い。この本で書かれている内容の本質を理解するには、自身が似たような状況になったときに読み返さなければいけないだろう。経験を積まなければいけないことは本書にも書いてある。

著者はこれまで先輩や同僚が教えてくれた道具の中から役に立ちそうなものを選び、また自分が経験から考えついた道具などを、どんどん道具箱に入れていったと述べている。誰もが自分の道具箱を持っていることが大切だ。他人の道具を必要なときに使わせてもらうだけでは、自分の道具にはならない。

本書で提示された道具も、ワインバーグ氏が経験から選んだ道具でしかない。これらも自身の経験から自分の道具箱に入れるかどうかを判断することが肝要だろう。自分が果たしてどれだけの「問題解決の道具」を持っているか。それを考え直すのに絶好の機会を与えてくれる。

目次概略

ジェラルド・M・ワインバーグ著/伊豆原弓訳『コンサルタントの道具箱ー勇気と自信がもてる16の秘密』の目次概略は以下の通り。

  1. イチゴジャムの法則
  2. 知恵の箱
  3. 金の鍵
  4. 勇気の棒
  5. 願いの杖
  6. 探偵帽と虫めがね
  7. イエス・ノーのメダル
  8. ハート
  9. 鏡
  10. 望遠鏡
  11. 魚眼レンズ
  12. ジャイロスコープ
  13. 卵、カラビナ、羽根
  14. 砂時計
  15. 酸素マスク
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