商品名やロゴを商標法で保護する

経営戦略
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商標は商品の目印

自分が提供するモノやサービスを、他と区別するのに「商標」を利用することがある。商品名やトレードマークだ。商標と聞くと、なんとなくロゴマークとか覚えやすい名称のことを示しているイメージがあるが、他と区別できるくらい有名になれば、音や色彩でも商標として認められるらしい。

起業直後のスタートアップや、スモールビジネスの経営にとって「商標」は大事な知的財産のひとつ。商品名やサービス名、社名などが、誰かの知的財産として登録されていてはちょっと困るはずだ。

知的財産を扱うのは、もちろん特許庁だ。特許庁は特許情報プラットフォームの「J-PlatPat」という検索システムを公開している。この検索システムで、既に登録されている商標を無料で閲覧することができる。さらに、スタートアップ向けに「商標を検索してみましょう」という特設ページを公開しており、「J-PlatPat」の使いこなしかたをガイドしてくれている。

試しに、このサイトの名称『びじぱぱ』を商標検索してみると結果はゼロ。ついでに『ノート』で検索してみると結果が3000件を超えたらしく、「J-PlatPat」が自動的に公知日/発行日で絞り込みを行い、2700件近くが表示された。

商標の使用権を保護してくれるのは「商標法」。現行の商標法は、1957年(昭和34年)法律第127号として制定され、最近では2~3年に一度程度のペースで改正されている。商標法には、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すことを目的としている」ことが書かれている。

よく「登録商標」という言葉を聞くが、これは「商標登録」を受けている商標のことだ。商標法によると、「商標」とは、標章(文字、図形、記号もしくは立体的形状、これらの結合またはこれらと色彩との結合)であって、次に掲げるものをいう。

  1. 生産業者、販売業者が商品に使用する標章
  2. 役務を提供する業者が役務に使用する標章

法律なので商品と役務と表現されているが、要はモノとサービスだ。さらに、「しょうひょう」は「ひょうしょう」だというので、若干ややこしいが、標章を「目印、記号、マークみたいなもの」と置き換えればよいだろう。

商標登録

自分たちの商品やサービスの名前やロゴマークを「商標法」で保護しようと考えるなら、商標登録をしてしまえばよい。商標登録を受けようとする場合、次に掲げる3つの事項を記載した願書を特許庁に提出して審査してもらうことになる。

  1. 出願人の氏名(名称)と住所(居所)
  2. 商標登録を受けようとする商標
  3. 商品や役務の区分

商標登録するために書く願書は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する「知的財産相談・支援ポータルサイト」にある『各種申請書類一覧』からダウンロードできる。

上記は紙による願書だが、電子証明書と専用のソフトウェア(インターネット出願ソフト)を用いて、自宅や社内のPCから特許庁へ特許等の出願や、特許庁から書類等の受け取りをオンラインで行うサービスもある。詳細は、電子出願ソフトサポートサイトに記載があるため、当コラムでは割愛する。

出願書類の書き方

前述のJ-PlatPat検索システムで調べた後、ダウンロードサイトから出願書類を入手したら、あとは「商標登録出願書類の書き方ガイド」 を参照しながら、商標登録願を作成するだけだ。書き方ガイドには丁寧な説明があるし、不明なこともほとんど調べれば分かるので、出願書類はあまり労せずかけてしまうだろう。以下に「書き方ガイド」の一部を引用して掲載する。

引用: 知的財産相談・支援ポータルサイト「商標登録出願書類の書き方ガイド

出願書類に記載する「区分」というものがある。その商標を用いる分野のことだ。区分については、J-PlatPatで調べるのだが「よく使う商品・役務名の検索方法」に解説がある。このように、分からないと思われるものにはあらゆる解説が準備されている。

先願主義と協議

出願に際し、知っておくべきは「早い者勝ち」ということ。商標法では、「同一または類似の商品または役務について使用をする同一または類似の商標について異なった日に2つ以上の商標登録出願があったときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる」ということが書いてある。

また、出願人の話し合いについても記載がある。「同一または類似の商品または役務について使用をする同一または類似の商標について同日に2つ以上の商標登録出願があったときは、商標登録出願人の協議により定めた1つの商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる」らしい。

商標権設定と10年の存続期間

商標権は、設定の登録により発生する。つまり、登録料の納付によって商標権が設定されるのだ。

厳密には、「登録料の納付または登録料の分割納付規定により商標登録をすべき旨の査定もしくは審決の謄本の送達があった日から30日以内に納付すべき登録料の納付があったときは、商標権の設定の登録がされる」ことになっている。

では、商標権の存続期間はというと、設定の登録の日から10年をもって終了する。ただし、商標権の存続期間は、商標権者の更新登録の申請により更新することが可能だ。商標権の存続期間を更新した旨の登録があったときは、存続期間は、その満了の時に更新される。

存続期間の更新登録の申請は、商標権の存続期間の満了前6カ月から満了の日までの間にしなければならない。もし、期間内に更新登録の申請をすることができないときは、その期間が経過した後であっても、その期間の経過後6カ月以内にその申請をすることができる。

商標法記載の商標権の効力

いよいよ商標権を取得できたら、その存続期間は、商品やサービスについて「登録商標」の使用をする権利を専有することになる。とはいえ、商標権があれば何でも許されるわけではない。ここでは、商標法に記載のある下記3点についてまとめておく。

  • 商標権の効力が及ばない範囲 (26条1項)
  • 商標権の侵害とみなす行為(37条)
  • 防護商標登録(64条1~2項)

商標権の効力が及ばない範囲

商標権の効力は、次に掲げる商標には及ばない。

  1. 自己の肖像または自己の氏名もしくは名称もしくは著名な雅号、芸名もしくは筆名もしくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標(ただし、この規定は、商標権の設定の登録があった後、不正競争の目的で、自己の肖像または自己の氏名もしくは名称もしくは著名な雅号、芸名もしくは筆名もしくはこれらの著名な略称を用いた場合は適用しない)
  2. 当該指定商品もしくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。次号において同じ。)、価格もしくは生産もしくは使用の方法もしくは時期または当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格もしくは提供の方法もしくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標
  3. 当該指定役務もしくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格もしくは提供の方法もしくは時期または当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格もしくは生産もしくは使用の方法もしくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標
  4. 当該指定商品もしくは指定役務またはこれらに類似する商品もしくは役務について慣用されている商標
  5. 商品または商品の包装の形状であって、その商品または商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標

侵害とみなす行為

次に掲げる行為は、当該商標権または専用使用権を侵害するものとみなす。

  1. 指定商品もしくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用または指定商品もしくは指定役務に類似する商品もしくは役務についての登録商標もしくはこれに類似する商標の使用
  2. 指定商品または指定商品もしくは指定役務に類似する商品であって、その商品またはその商品の包装に登録商標またはこれに類似する商標を付したものを譲渡または引渡しのために所持する行為
  3. 指定役務または指定役務もしくは指定商品に類似する役務の提供に当たり、その提供を受ける者の利用に供する物に登録商標またはこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、または輸入する行為
  4. 指定役務または指定役務もしくは指定商品に類似する役務の提供に当たり、その提供を受ける者の利用に供する物に登録商標またはこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、または譲渡もしくは引渡しのために所持し、もしくは輸入する行為
  5. 指定商品もしくは指定役務またはこれらに類似する商品もしくは役務について登録商標またはこれに類似する商標の使用をするために登録商標またはこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
  6. 指定商品もしくは指定役務またはこれらに類似する商品もしくは役務について登録商標またはこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標またはこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、または譲渡し若しくは引渡のために所持する行為
  7. 指定商品もしくは指定役務またはこれらに類似する商品もしくは役務について登録商標またはこれに類似する商標の使用をし、または使用をさせるために登録商標またはこれに類似する商標を表示する物を製造し、または輸入する行為
  8. 登録商標またはこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、または輸入する行為

防護標章登録

商標権者は、その登録商標にかかわる指定商品および指定役務について他人が登録商標の使用をすることにより、その商品または役務と自己の業務にかかわる指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品または役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。

出願から登録の流れ

商標登録の流れについては、特許庁のホームページ等で見ることができる。「出願」がなされた後に商標審査官による「審査」が行われ、審査を通過したもののみが「商標登録」を受けることができる。出願や登録(更新)等する際には、所定の料金の納付が必要になる。それだけだ。必要な料金も含めた流れは下図の通り。

引用:特許庁「初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~

上図には、審査の流れと並行して「出願公開」というものがある。原則として出願日から2~3週間程度経過後、出願内容が一般に公開される。

出願後の気になる2点

出願したあとに気になることはさまざまあるだろうが、代表格は「いつ審査されるのだろう」ということと、「拒否理由通知が届いたがどうしよう」の2点だ。

■いつ審査されるのか

特許庁では、商標登録出願後の案件について、審査の着手見通し時期を「商標審査着手状況(審査未着手案件)」というページで公表している。これはあくまでも着手時期の目安であって、着手時期を保証するものではないが、出願者にとっては重要な情報だ。

審査着手状況の公表ページから、出願後に審査着手まで12カ月程度の期間となっていることが分かる。審査着手まで約1年ということになる。これが一般的な「いつ審査されるのか」の回答だ。もちろん、さまざまな事情で早期の権利化を希望する場合もある。そういうニーズに応えるために、約2カ月の「商標早期審査」、約6カ月の「ファストトラック審査」も準備されている。

■拒否理由通知が届いた

審査の結果、商標登録できない理由が発見された場合、拒絶理由が通知される。受取った側は困惑するが、それに対して意見を述べたり(意見書の提出)、指定商品・指定役務を補正したり(手続補正書の提出)することで拒絶理由を解消できることがある。

どういう対応をするかについても、特許庁は「お助けサイト(商標の拒絶理由通知書を受け取った方へ)」で意見書や手続補正書のサンプルなど公開している。これらの様式や書式については、「知的財産支援・相談ポータルサイト」に置いてあるので、ここから入手して記載すればいい。

商標出願・登録の料金

特許庁では「産業財産権関係料金一覧」を公開している。ここから商標出願・登録に関する料金を抜粋し、以下にまとめておこう。

出願料

項目金額
商標登録出願3,400円+(区分数×8,600円)
防護標章登録出願又は防護標章登録に基づく権利の存続期間更新登録出願6,800円+(区分数×17,200円)

■商標登録料

項目金額
商標登録料区分数×28,200円
分納額(前期・後期支払分)区分数×16,400円
更新登録申請区分数×38,800円
分納額(前期・後期支払分)区分数×22,600円
商標権の分割申請30,000円
防護標章登録料区分数×28,200円
防護標章更新登録料区分数×33,400円

商標法は、2~3年くらいで改正されていると前述したが、出願・登録に関わる料金も改正され、どんどん値下げされている。

さらに特許庁は、特許・実用新案・意匠・商標に関係する料金を手軽に計算できる「手続料金計算システム」を公開している。

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