著作権の概要と管理・運営の動向

知的財産
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著作権の適切な扱い

この「びじぱぱノート」では、国内外の著作権フリー写真素材を用いて、サイズなどを調整することで各記事のタイトル画像として使っている。もちろん、必要なものはライセンス料を支払って利用するのだが、著作権フリーの写真素材は当初思っていたより膨大な量があり、しかも美しいものが多い。そのため、今のところフリー素材を中心とした運用でほとんど事足りている。

インターネットの急激な普及に伴い、著作権や特許権などの知的財産権に関するビジネスが注目を集めるようになったと感じている。それ以前は、ビジネスといえば「モノ」を販売するものだった。インターネットの時代は、ゲームコンテンツに代表されるように、「独創的なアイデア」や「アイデアそのもの」、あるいは著作物など、知的財産が商品として重要な価値を持つようになってきている。

漫画雑誌という「モノ」を買わなくても、映画DVDや音楽CDという「モノ」を買わなくても、その著作物がスマートフォンで楽しめるようになっている。こうした状況を背景に、著作権を適切に管理・運営しようという動きは以前にも増して重要になってきている。

今回は、著作権の概要と、それを管理・運営することについての動向をまとめてみたい。

著作権の概要

知的財産に関する専門家で『弁理士』という職業がある。特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得したい人や組織のために、代理して特許庁への手続きを行うのが弁理士の主な仕事だ。その弁理士の団体である日本弁理士会は、著作権と著作物について以下の説明をしている。

著作権は著作物を保護するための権利です。
著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。

引用:日本弁理士会:「著作権とは

一般に著作権とは、知的財産権の一種で、著作物をもつ著作者の権利を保護するためのルールを指す。他人の著作物を真似してできた作品は「著作物」とはいえない。また、形として存在しない物も著作物ではない。従って、頭の中にあるイメージやアイデアは著作権では保護されない。

知的所有権の中での著作権の位置づけ

著作権の発生

著作権は図中にある工業所有権(特許権・意匠権・商標権など)と違い、権利を取得するために登録などの手続きを必要としない。ただし、登録することは可能だ。

著作権は、著作物を創作したときに発生する。具体的には、小説なら原稿を書いたとき、音楽なら楽譜を書いたときに著作権が発生する。

また、著作物を創作した人を「著作者」という。著作者は著作物を創作した時点では著作権を持っているが、著作権は譲渡したり、相続によって移転したりすることができる。著作権を持っている人を「著作権者」という。移転や譲渡ができるということは、著作者と著作権者が別の場合もあるということになる。

著作権法という法律

著作権の範囲や内容を定めた「著作権法」という法律がある。文化庁が公開している著作権関連の情報のうち「最近の法改正等について」を見ると、2-3年に一度くらいのペースで著作権法は改正されているようだ。

著作権法で規程されている権利は、以下の3つに分類することができる。

  • 著作者人格権
  • 著作隣接権
  • 著作権

人格や隣接という難解な言葉が出てきて、そのままではよく分からないので、簡単に概要をまとめてみる。

「著作者人格権」とは、著作物を創作した著作者の人格を保護する法律。内容として「公表権」「氏名保持権」「同一性保持権」がある。「著作者人格権」は、著作物を創作した著作者に属するものなので、譲渡したり、相続によって移転したりすることはできない。

「著作隣接権」とは、現代社会においては、実演家、レコード製作者、放送事業者などが、著作物から経済的利益を生み出す鍵となっている実情に鑑みて、実演家、レコード製作者、放送事業者などに付与される著作者と同じようないくつかの権利を指す。そして、今回のテーマである「著作権」がある。

■著作権の中の権利

著作権は、ひとつの権利ではなく、著作権法によって規程された複数の権利の集合体。主な権利としては、「複製権」「演奏権」「公衆送信権」「口述権」「展示権」「上映権」「頒布権」「貸与権」「翻案権」などがある。これらの権利が、著作権法によって保護されている。

著作権は、対価を支払うことと引き換えに著作物の利用を許可する権利。そのため、著作権は財産的な利益を保護する権利(財産権)といえる。従って、著作権を譲渡したり、担保を設定したりすることもできることになる。

著作権(知的財産権)保護への動き

日本において著作権(知的財産権)に対する認識が大きく変化したのはそれほど昔のことではない。認識が大きく変化したのは「海外の影響」。日本ではよくある話だ。

特に米国の影響が大きく、徹底した保護政策によって、特許なども含めた著作権ビジネスが莫大な富を生み出すということが示されたことが背景にあると聞いている。一方、日本では、米国の企業に特許を侵害したとして多額の賠償金を支払わせられるケースが頻発したこともあり、特許権・著作権などの知的財産権に対する社会的な認識が変化する要因になった。

現在、日本では、原則として著作権の有効期間は、著作者の死後70年。共同著作物の場合は、最後に死亡した著作者の死後70年だ。一部の例外として「公表後70年」というものもあり、何が例外なのかについては、文化庁の公開情報「著作者の権利の発生及び保護期間について」にまとめられている。ヨーロッパも原則は死後70年だ。米国では、例えば会社での職務著作物の場合、最初の発行年から95年間、または創作年から120年間のいずれか短い期間となっているようだ。

ミッキーマウスで有名な米ディズニー社は、1928年に著作権登録されたミッキーマウスの著作権が切れそうになるたびに猛烈なロビー活動を行い、著作権の有効期間を延長させてきたといわれている。これを揶揄して、米国の著作権法は「ミッキーマウス保護法」などと呼ばれることすらあるという。しかし、文化の革新性と創造性に対する影響の是非はともかくとして、このような著作権保護政策が米国の経済と企業の利益を守っているのは、紛れもない事実といえるだろう。

米国での著作権の期間が95年ということから、 1928年に著作権登録されたミッキーマウスの著作権は2023年に切れることになる。ミッキーマウスは世界でのキャラクター収入が年間5000億円とも言われる。その著作権が切れるとは大事件ではないかということで、近年、いくつかメディアがこのことを取り上げていた。

このような米国での状況を受け、日本においても著作物に対する「著作権」を積極的に保護しようという動きがみられるようになっている。

著作権の動向

著作権侵害の事例

著作権に対する意識の高まりもあり、著作権を侵害されたと訴えられるケースをよく見かけるようになった。ときどきニュースで見聞きするような著作権侵害の事例を列挙してみよう。

  • 他人のソフトウェアをコピーして、使用料を支払わずに自宅やそのほかのPCで使用する
  • メーカーのロゴマークやアニメキャラクターの画像を著作権者の許可なしに使用する
  • 雑誌などのタレントの写真を無断で自分のWebサイトで公開する
  • 他人のホームページのデザインや文章を無断で使用する
  • 新聞記事のコピーを配布する
  • 他人が作った曲を自分が演奏してそれをインターネット上で聞けるようにする

上記はすべて著作権者の権利を侵害している。基本的に著作権とは、著作権者が許可する場合を除いて、著作物使用のための料金が発生する仕組みだからだ。この仕組みを「補償金請求権」という。料金の支払いがない場合、著作権者から著作物の使用を差し止められるよう要求されることがある。

著作物の使用差し止めの実例としてよく取り上げられるのが、1987年の滋賀県某市の小学校プールでの事件。前述の「2023年に著作権が切れる」かもしれないミッキーマウスの話として有名だ。

その小学校では、卒業記念として児童や先生が学校プールの底にミッキーマウスの絵を描いた。しかし、そのニュースを知った米ディズニー社は著作権を主張して塗りつぶすことを要求し、そのミッキーマウスはペンキで塗りつぶされた。そんな事件だ。

今考えると、30数年前の日本の「著作権に対する認識」がこんなものだったという証拠となる事件かもしれない。前述の通り、その後の日本では著作権に対する認識は大きく変わった。

著作物を自由に使用できる場合

どのような場合でも著作権侵害になるわけではない。著作物を個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、その使用する者が複製することができる。これを「私的使用」という。あらゆる著作物は、私的使用においては、複製することができる。

音楽の著作権管理で有名な「JASRAC」で知られる一般社団法人日本音楽著作権協会は、関連する著作権法第30条について以下の説明を公開している。

著作権法第30条第1項では、以下の条件にあてはまる場合は、「私的使用のための複製」として、作詞者、作曲者等著作権者の許諾を得ることなく音楽などの著作物を複製できることが定められています。

1. 個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とした複製であること
2. 使用する本人が複製すること
3. 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(専ら文書又は図画の複製に供するものを除く。)を用いないこと
4. コピープロテクションを解除して(又は解除されていることを知っていながら)複製するものでないこと
5. 違法にインターネット上にアップロードされたものと知りながらダウンロードした音楽または映像ではないこと

引用:一般社団法人日本音楽著作権協会「著作権法第30・35条とは

これは、私的使用におけるコピー(複製権)の場合であり、インターネットでの利用(公衆送信)や演奏など複製以外の場合は、たとえ個人的な利用のつもりでも著作権者の許諾が必要となる。また、コピープロテクト(複製阻止の手段)が施されている著作物のプロテクトを不能にしてコピーすることは、目的が私的使用であっても認められない。これには、映像を収めたDVDビデオなどが該当する。

そのほか、著作物を自由に利用できるケースとしては、「引用、保護期間が過ぎた著作物」「図書館における複製」「教育機関における複製」「点字による複製等」「非営利目的の上演・演奏」「美術著作物の所有者による展示」「裁判手続きにおける複製」「プログラム著作物の複製物の所有者による複製」などがある。これらのケースに該当しないものは、すべて、使用に際しては著作権者の許可が必要になる。

インターネットでの著作権侵害事例

1990年代後半より、新聞やテレビといった従来のメディアとはまったく違った新しい概念の情報メディアであるインタ-ネットが爆発的に普及した。インターネットは個人が世界中に向けて情報を発信できる革新的なメディアとなった。さらに、今では日常のコミュニケーションがSNS中心になりつつある。ネット上で扱われる著作物はデジタルデータであるため、これまで登場したどのメディアよりも複製が容易であるという特徴がある。

■オークションサイトでのアニメキャラクター複写販売

ゲームのキャラクターのイラストを無断でコピーしたステッカーシールをインターネットオークションで販売したとして、埼玉県内の男性会社員が著作権法違反で書類送検されている。

人気キャラクター「初音ミク」などを無断使用したステッカーを販売したとして、横須賀署は4日、著作権法違反の疑いで、埼玉県久喜市の男性会社員(61)を書類送検する。

書類送検容疑は、2016年1月から18年12月にかけて、「初音ミク」や、「魔法少女まどか☆マギカ」のキャラクター「鹿目まどか」などのイラストを複写したステッカー2千枚以上をインターネットのオークションサイトで販売し、約340万円を売り上げるなどして計16社の著作権を侵害した、としている。

引用:神奈川新聞「カナコロ」:2020年6月3日(水)

■YouTubeでの著作権侵害

YouTubeでの著作権侵害事例は多い。テレビで放送されたプロ野球中継を、テレビ局に無断でYouTubeで配信した著作権侵害行為について、配信者が逮捕された事件があったほか、映画やアニメを著作権者に無断でYouTubeにアップロードする行為も、著作権の権利保護期間が切れていない場合は、著作権侵害行為にあたる。

2021年12月、米YouTubeは著作権侵害の申立件数を「著作権透明性レポート」として初公開した。この著作権透明性レポートは、著作権の申立件数や、申し立てに使われたツール、動画の削除依頼に対する異議申し立ての割合などについてまとめた資料。今回が初公開で、今後は半年に1回更新するらしい。

このレポートによれば、2021年上半期の著作権申立件数は7億2000万件以上。そのうち約99%は、映画や音楽など二次利用されやすいコンテンツを持つ著作権者向けの自動申立ツール「Content ID」によるものだった。Content ID経由で出された削除依頼は約7億1895万件で、そのうち動画をアップロードしたユーザーが異議を申し立てたのは0.5%に当たる約340万件にとどまった。

■Twitterでの著作権侵害

著作権のあるインターネット上の画像を自分のツイートで表示することは、画像のコピーにあたり、著作権侵害。これが原則だ。

それをリツイートした場合にも、著作権侵害の責任を問われるかどうかに関する東京地方裁判所の判決がある。これによると、リツイートにおいて表示されるのは元のツイートへのリンクにすぎず、リツイートすることは、元の画像をコピーすることには当たらないとして、著作権侵害には該当しないとしている。

ただ、その後の最高裁判所の判決によると、オリジナルの画像に著作権者の氏名が表示されている場合に、Twitterの仕様により、リツイート時にその氏名部分が表示されない場合は、リツイート行為が、著作者人格権(氏名表示権)の侵害になるケースがあると判断している。

こうした状況が発生するのは、デジタル化された著作物は扱い易く、コピー(複製)が容易という特徴があるからにほかならない。音楽業界やIT業界、映画、アニメや漫画の関連企業では、例えばコピープロテクトプログラムや電子透かし技術などの技術的な対応によって、違法なコピーを減らそうと取り組んでいる。

著作権管理の方向

著作権管理事業法の成立

2001年10月に「著作権等管理事業法」が施行された。この法律は、著作権者と著作物の管理委託契約を結んで使用料の徴収などの事業を行う、著作権等管理事業について定めている。

著作権管理事業法では、適用対象範囲を著作権及び著作隣接権の及ぶ全ての分野(著作物一般、実演、レコード、放送、有線放送)に拡大することが規程され、事実上すべての著作物に対して著作権等管理事業を行うことができるようになった。

また、新規参入を容易にするため、業務実施を「許可制」から「登録制」に、著作物の使用料を「認可制」から「届出制」に改められ、さらに適正な使用料を設定するための協議・裁定制度を整備するなど、適正な業務運営を確保するための措置を併せて整備することが定められた。これらの規程により、著作権管理ビジネスへ参入する企業が増加した。

著作権管理ビジネス

著作権等管理事業法が施行される以前は、著作権管理業務を行う場合は、文化庁長官の許可が必要で、事実上新規参入は困難だった。しかし、同法の施行により、著作権管理ビジネスに新規参入する企業が現れている。

例えば音楽の著作権管理に関しては、これまでは前述した「JASRAC」とよばれる一般社団法人日本音楽著作権協会がすべて行っていたが、現在では他の企業・団体も行っている。そのため、音楽などの楽曲の著作権使用料は、著作権者がJASRAC以外の企業・団体と著作物の管理委託契約を結んだ場合は、その企業・団体に使用料を支払えばよく、JASRACに使用料を払う必要はないということになる。

著作権等管理事業者

著作物の使用料額の水準に対する影響力が大きい管理事業者については、文化庁長官が「指定著作権等管理事業者」として指定しています。指定著作権等管理事業者は、著作物の利用者が著しく不利益を蒙らないよう、利用者代表から使用料規程に関する協議の求めがあった場合には応じる義務などがある。

文化庁は「指定著管理事業者について」というWebページで情報を公開しており、このコラムを書いている時点では以下の7事業者が該当している。

なお、2023年4月現在、音楽・美術・言語など、さまざまな分野で著作権等管理事業者として登録している企業・団体は、上記6団体を含めて29に上る。これらも文化庁の「著作権等管理事業者の登録状況」で「著作権等管理事業者登録状況一覧」として確認できるほか、登録番号・事業者名・著作物等の分類から条件を指定して事業者を検索することができる。

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