新商品の一般的な開発プロセス

組織の運用
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新商品開発は終わらない

新商品をつくったり、新サービスを提供することはビジネスで生きていく者の運命だ。誰か他人がつくった商品やサービスを販売するとしても、その「販売サービス」に新しい価値を付加しないと、すぐにビジネスは成り立たなくなる。

市場の変化/競争の激化

少子高齢化だけを考えてみても、社会構造の変革や消費者の趣味・嗜好の変化が起きているのは間違いない。特に一般消費者向けの商品を開発している企業にとっては、その変化に対応した商品の提供が常に求められる。これは大企業でもスモールビジネスでも同じだ。

他にも、環境問題や規制緩和または強化によって、商品やサービスの仕様を変更することを余儀なくされ、商品の品質のみならず、その製造方法やアフターフォローの方法にいたるまで修正を必要とされることもあり得る。そういった状況でも、価格競争は激化を極め、同業他社だけでなく、他業種や海外商品との競合も増加する。

業界や商品・サービスの種類によって事情は異なるが、他社との競争に打ち勝ち、生き残るには新商品・新サービスの開発は必須であり、これが終わるときはビジネスそのものが終わるときだ。

商品のライフサイクル

別コラム「成熟期のオンリーワン戦略」で書いたとおり、商品には以下のライフサイクルがある。

開発→導入期→成長期→成熟期→衰退期

導入期は新商品または新サービスを市場に投入した時期のこと。販売が開始されたばかりのため競合商品は少なく価格も高めだ。成長期は競合商品も増え、市場でのシェア獲得のための販売戦略が重要となる。そして成熟期に入ると値引きが行われ、価格競争が始まる。衰退期では販売量は減少し、商品によっては大幅な値下げや在庫処分が行われる。

ライフサイクルは商品・サービスの種類によって異なる。例えば、調味料などの場合、安定した需要が見込めるため、ライフサイクルは非常に長くなる。一方、流行りの食材や人気のキャラクターなどを利用した商品の場合はライフサイクルは短くなる。

商品やサービスが成熟期や衰退期にある場合、そのままで将来的な成長は望めない。生き残るためには新商品を開発して、新たな主力商品を確保する必要がある。

新商品開発のプロセス

新商品・新サービスの開発方法は、その分野や業種などによって様々だが、ごく一般的なプロセスをここにまとめておく。新しいアイデアから始まり、商品化後のアフターフォローまでをざっと眺めてみよう。

アイデア

新商品のアイデアは、新商品の開発を目的に創出されるケースと、偶然のアイデアをもとに新商品を開発するケースがある。

前者の場合、ある一定期間を設けてアイデアをスタッフから募ったり、ブレーンストーミングなどの手法でアイデアを集めるのが一般的だ。後者の場合は、アイデアを出そうと思って考えたわけでなく、「こんな商品があったら売れるのでは?」という偶然のアイデアから商品開発する。

いざアイデアを捻出しようと思ってもなかなかよいアイデアは浮かばないのが普通だ。会社によっては、偶然のアイデアを吸収する意味で、社内「提案制度」などを設けて定期的にアイデアを募集している。

アイデアの創出という意味では、顧客からのクレームなどをデータベース化しておき、今後クレームのないような商品開発のアイデアとして利用したり、消費者調査などを通じて、「消費者の生の声」を集めるようにするのもよいアイデアを創出する仕組みとして役立つ。

マーケット分析

新商品のアイデアが出揃い、どのアイデアを採用するのかという段階では、それぞれのアイデアのマーケット分析を行う。そのアイデアに市場性があるかどうかを見極めるのだ。

「市場規模」「競合商品」「将来性」などの市場分析を行い、一番よいアイデアを選定する。その際、「消費者へのアンケート調査」などを実施して好評のあったアイデアを選ぶのも一つの方法だ。

市場分析を行うノウハウがない場合は、外部のプロへのアウトソーシングを検討するとよいだろう。

企画

この段階では、各種スケジュールや予算、製造方法などを企画する。具体的には「試作品」「消費者モニター」「販売代理店募集」「製造」「営業」「販売日」などのスケジュールとともに、「開発費」「材料費」「人件費」などのコスト算出や、「外注先の選定」などの製造方法を検討する。同時にそれぞれの項目ごとに、スケジュール、予算、品質などの管理責任者を決める。

できれば企画の段階で、「販売数の見込み」とともに、開発費、材料費、人件費などを考慮に入れた「利益の見込み」も立てておくとよいだろう。その結果、利益の確保が望めないような企画であれば、この段階でお蔵入りにする。

開発

開発の段階では、まず仕様書を作成し、それを基に試作品を完成させる。試作品はなるべく完成品に近いものが望ましいが、ここで問題となるのは製造コストだ。いくらよいものでも製造コストが多大にかかるのであれば大量生産ができない。大量生産を念頭において材料・素材の選定を行い、場合によっては外注を検討する。

自前の技術レベルや機材の有無によっては、外注の方が結果的に安く上がることも少なくない。いかに製造コストを下げることができるのかという点を踏まえながら開発することが重要だ。

テストマーケティング

試作品が出来上がったら、その商品が本当に計画通りに売れるのかどうかを検証する。消費者モニターのほか、限られた地域での市場テストや営業テストなどを行い、予想通りの販売ができるのかを調べる。

その際、期待通りまたは期待以上の販売結果が得られれば、すぐにでも商品化し、全国に向けて販売することができる。逆に期待通りの結果を得られなかったときは、たとえ企画の段階で売れるという結果がでても「実際は売れない」と割り切り、商品化は見送られることが多い。

ここまでの開発費は無駄になるが、売れない商品を市場に導入しても何の意味もない。再度アイデアまたは企画の段階からやり直すことになる。

商品化

テストマーケティングが終了したら、いよいよ商品化だ。大量生産を踏まえた製造方法の確立、パッケージの選定、広告戦略の推進などを行い、販売を開始する。

その際、商品の種類にもよるが、流通ルートの開拓も重要となる。企画の段階で定めていた営業方法のほかに、代理店の選定や特殊なルートでの販売方法など、さまざまな拡販方法を推進する。

さらに、顧客へのアフターフォローの仕方や、クレーム処理の対処方法などもこの段階で明確にしておく。

販売後のフォロー

販売を開始した後は、顧客からのクレームや意見を集め、商品の仕様やパッケージの見直しを図り、マイナーチェンジなどを積み重ねる。

また、競合商品が出回るときのために、「価格競争の強化」や「高付加価値化」などが必要になる。

マーケティング分析と販路の確保

新商品の開発に当たっては、ただ開発し販売するだけでは、売れるものも売れない。正確なマーケット分析とともに、販路の確保が重要となる。

通常、新商品といえば、大きくは以下の3つくらいに分類できる。

  1. 今までにない商品
  2. 他社にはあるが自社での初商品
  3. 既存商品を改良したもの

それぞれの分類ごとにマーケット分析や販路の確保の手法は異なる。また、商品のライフサイクルによっても商品の仕様やコンセプトを変更する必要がある。

以下では、それぞれの分類ごとに新商品を開発・販売するうえで留意することをまとめておこう。

今までにない商品

今までにないまったく新しい商品を開発し販売する場合、その市場規模は未知数となる。商品を購入する消費者の「年齢層」「性別」「嗜好」のほか、「デザイン」「販路」「年間販売量」「将来性」などを考慮し、確実に売れることが見込めた段階で参入することが求められる。

これらのノウハウを自前で持っている場合は問題ないが、そうでない場合は自前ノウハウだけに頼らず、例えば次のような業種と協力することによって商品を企画していくことが近道となる。

  • 商品企画会社:売れる商品の企画
  • テレマーケティング会社:消費者へのアンケート調査
  • 市場調査会社:マーケット分析

これらのなかで最も頼りにすべきは、プロの商品企画会社だろう。テレマーケティング会社や市場調査会社の場合、それぞれの商品に対して調査や分析を行うのが仕事であり、売れるかどうかの見込みはあくまで予想となる。参考とはなるものの、実際の販路の開拓は期待できない。

商品企画会社にはさまざまな会社があるが、なかには強力な販路を持ち、その販路で販売することが期待できる商品を企画している会社もある。そのような商品企画会社と提携し、将来的には自社で企画開発ができるようにノウハウを吸収することが重要だろう。

優れた商品企画会社を見つけるためには、今までの実績のほか、「具体的な販路を提示できるか」ということを見極めることが最大のポイントとなる。

商品企画が決定した後は、販路を探すこととなる。販路はできれば企画の段階で見込みを立てておくことが望ましく、「このような商品があったら取り扱ってくれますか」といった問い合わせをするとともに、「○○円以下であれば○○個発注してもよい」というレベルの販路をいくつか開拓し、確実に採算が合うと判断できた段階で商品化することが求められる。

なお、このケースを商品のライフサイクルに当てはめると、今までにない全く新しい商品のため「導入期」となる。当然、価格競争による値下げを行う必要もなく、価格も強気に設定できる。しかし、競合商品が現れたときにはさらなる高付加価値化や生産コストの見直しによる低価格が必要となる。競合商品の動向を見据え、常に売れる商品開発を行うことが大切だ。

他社にはあるが自社での初商品

他社では販売しているが自社にとっては初めて生産する商品の場合、既存市場への参入となるため、市場の把握はもとより、消費者へのアンケート調査が重要となる。

「他社商品と比べどう思うか」「いくらなら購入するのか」などという商品そのもののアンケートのほか、「パッケージのデザイン」「購買意欲をそそるキャッチコピー」など、十分な調査を重ねたうえで商品化することとなるだろう。できれば、テレマーケティング会社などの消費者アンケートの専門企業に依頼し、正確で客観的な情報を入手するとよいだろう。

既存市場への新規参入は、通常「既存品よりも安くていいもの」、「既存品よりも高いが付加価値が付いているもの」のいずれかを販売することになるはずだ。前者の場合は、商品1個当たりの利益は少なくなるため、大量に販売しなければ利益の確保が難しい。後者の場合は逆に高付加価値を前面に押し出し、なるべく商品1個当たりの利益が大きくなるようにすることが求められる。

販路に関しては、大手の販売店や問屋への営業のほか、通信販売やインターネット上での販売など、独自の販売ルートも検討する。営業先の選定は、それぞれの業態や商品のカテゴリごとに業界団体を調べ、その業界団体から名簿を入手するのが早道となるだろう。名簿を公表していない業界団体に関しては、大手企業を数社紹介してもらうなど、できるだけ効率的な営業を心がけよう。

既存商品を改良したもの

既存商品に何らかの改良を加えたものを新商品として販売する場合は、従来のデザインやパッケージをそのまま踏襲するのではなく、何らかのリニューアルを加えた方がよい。もっとも、現在の売れ行き状況や、競合の度合いによってデザインやパッケージのリニューアル方法は異なってくる。

例えば、「市場でのシェアはナンバーワンだが、競合商品によって販売数が減少している」という商品の場合、何らかの改良を加えて商品の高付加価値化を図ることは非常に有効だ。

その際、商品が成長期にあるときは、機能強化や容量の増加、新材料の採用など、高付加価値化をアピールするに留め、大幅なリニューアルはしない方が得策といえる。成長期のリニューアルは、せっかく構築した認知度を下げてしまうリスクが大きくなる。

逆に、商品が成熟期にあり、「買い換え需要を狙う」という状況の場合は、デザインやパッケージの大幅なリニューアルが効果的だ。商品の種類にもよるが、新商品としての販売は、競合商品よりも新鮮な商品として販売することが可能なため、競合優位に立てる可能性が大きい。

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