社内会議は無駄なのか
以前に公開したコラム「社内会議を活性化したい」で、こんなことを書いた。
しかし残念なことに、多くの場合は社内会議に対する風当たりが厳しく、「時間の無駄」「コストの無駄」などの指摘を受けることがある。ここで改めて社内会議の重要性を認識し、活気ある社内会議を考えてみたい。
引用:「社内会議を活性化したい」
このときのテーマは「活気」だったが、今回は異なる視点の「生産性とやる気の改革」で会議を説いている本を取り上げてみたい。行本明説+日本タイムマネジメント普及協会著『最強の会議力~ビジネスコミュニケーションの法則50』だ。
著者の行本明説氏は、タイム・セルフマネジメント専門のコンサルタント。かつて、今でいうスマートフォンのような未来的ガジェットで、シャープが開発した『ザウルス』という小型情報端末があった。著者の行本氏はそのブーム火付け役の一人でもある。時間管理に関する著作を随分と出している。
ビジネスマンの誰もが、会議が仕事を邪魔していると思う。しかし、会議ほど重要なものはないとも考える。この矛盾の中にこそ、会議の本質が何であり、どうすれば会議を価値があり効率的なものにするかを見つけ出す鍵があるといえるだろう。
本書は、会議の最も重要な意義は、コミュニケーションにあると結論する。したがって、大勢が参加する長時間の会議では効果が落ちる。コミュニケーションがその本質であるから、出席者一人一人が自分の意見を持っていることが重要になる。会議を開いて、意思の疎通を図るだけでは意味がない。共通の目標と、共通の行動計画があってこそ、会議は意義あるものになる。
コミュニケーションに用いられる技術は、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つであるが、ある調査の結果によると、仕事に占める割合は、多い順に以下の比率であった。
- 聞く=45%
- 話す=30%
- 読む=15%
- 書く=10%
自分と他人の優先順位
仕事とは「自分と他人の共同作業」であると言えるであろう。ビジネスにおいて、自分と他人が直接接するのが「会議」「打ち合わせ」である。これはコミュニケーションにほかならない。この部分のスキルアップが実現できれば、仕事がはかどり、質的な向上につながるのは間違いない。
ある調査によると、会議に使っている時間は、一般職で全体の勤務時間の24%、管理職では58%に達している。上級管理職になるほど、コミュニケーションに費やされる時間は増える。
仕事の阻害要因のトップには、会議があげられる。どこでも会議は悪モノ扱いされるのが普通である。しかし、考えてみれば、会議を行っているのは人であり、参加する個人に問題があるということになる。
「会議の悪魔のサイクル」というのがある。会議が多いから、参加者は考える時間(自分の時間)がなくなり、考えのないまま会議に出席するから無内容な会議になる。そこで再度会議が招集され、さらに自分の時間が減り、会議ばかりが増えていくという悪循環である。
この悪循環を断ち切るには、やはり個人の意識改革しかない。それが「セルフマネジメント」である。とくに自分で考える時間を持つことである。
「セルフマネジメント」の基本は、タイムマネジメントである。多くの人が時間がなくて困っている。時間管理に関して書かれた本は100冊以上も出ているが、実際に効果をあげているものは少ない。しかし次のように考えれば、タイムマネジメントは、ごくシンプルなものである。
仕事というのは「誰が仕事をするか」という観点からみれば、「自分1人」と「他人と共同」の2つである。この2つの仕事には、それぞれ「はじめ」と「終わり」があるから、(1)自分1人の仕事のはじめ(2)自分1人の仕事の終わり(3)他人と共同の仕事のはじめ(4)他人と共同の仕事の終わりの4つが、すべてのビジネス時間だということになる。
ところが実際には、多くの人が「自分1人の時間」のことしか考えなかったり、他人と共同の仕事の「はじまり」しか意識しないでいる。この4つをコントロールすることが、時間欠乏症をなくす有力な方法になる。
中でも特に重要なのが、「自分1人の仕事のはじめ」と「他人と共同の仕事の終わり」の管理である。
タイムマネジメントの視点から会議を考えると、会議は「他人と共同の作業」だから、その終わりが重要になる。いうなれば、会議の終わりの時間をきっちり決めることが、投下時間を明確にし、その時間内でやれることもはっきりする。
会議の始まりの時間は気にしても、終わりの時間を厳格に決めることは一般にしないものである。会議の時間短縮には、次の3カ条が有効である。
- 終わりの時間を決める(守る)
- 目的を絞る(できれば単一目的)
- 参加者を絞る(必要な人だけ)
会議で参加メンバーの「やる気」を導き出すには、明確な「行動計画」を作る必要がある。業務報告会議を開いても、ただ報告を聞くだけでは時間のムダになる。会議を開いている「目標」は何か、報告を聞いて全員が「何をするか」が明確になっていれば、無駄な会議は減る。これは、「行動計画の共有化」でもある。
しかし、行動計画があっても、各自の仕事が予定どおり(目標どおり)進まなければ意味はない。どうすれば予定どおり仕事が進むか。情報の公平化と情報の共有化にポイントがあり、会議はそのためでもある。
仕事には、「事前にわかる仕事」と「事前にわからない仕事」がある。後者は、いわば「突発の仕事」である。仕事の予定を狂わせるのは、主にこの突発的に起きる仕事だといってよい。突発の仕事は計画を立てようがないので、100%予定どおりに仕事を進めることは不可能だということになる。できることは、いかに100%に近づけるか、予定どおりに仕事が進まないダメージをいかに減らすかということになる。
そこで必要なのが「優先順位」の発想である。仕事の優先順位を決める基準は2つある。1つは「それが大事」という基準。もう1つは「何からやるか?」という基準である。前者は、仕事の「質」を高める基準で、後者は仕事の「量」を多くこなすための基準ということになる。
事前にわかる仕事は主に「質」を高めることが目標となり、突発の仕事には「量」をこなすことが求められる。
「優先順位」で問題になるのは、自分の優先順位と他人の優先順位とが一致しないことが多いということであろう。それを解決するのが「目標」「行動計画」である。
【参考】
会議のうまいやり方について書かれた本は多い。外国人が書いた2冊の本には次のようなことが書かれている。
『会議が絶対うまくいく法』(マイケル・ドイル/デイヴィッド・ストラウス著/日本経済新聞社)
この本では、会議の上手なやり方として、次の5つの法則をあげている。
- 1つの議題にみんなが集中していること
- 1つの議事運営方法にみんなが同意していること
- 誰かが責任をもって、オープンでバランスのとれた発言が交換できるように努力していること
- 個人が攻撃を受けたら、その人を守る役割の人がいること
- 会議で各自の役割が明確であり、誰もがそれに同意していること
『会議なんてやめちまえ!』(スコット・スネア著/早川書房)
この本の著者は「すぐれた管理職は会議を開かない」と喝破している。
管理すべきは2項目
本書でも指摘されている通り、会議に関するビジネス書は、国内外問わず非常に多い。勤務時間中の会議に費やす時間を考えれば、それだけ関心を持たれるテーマであり、新しい視点を提案すれば売れるという証拠なのだろう。
本書は、過去の色々な時間管理に関するビジネス書で出尽くした感のあるセルフマネジメントを、実例ベースで分かりやすくした内容であった。望月部長という架空の人物と、その周辺の物語が、より実感を持たせるのに役立っている。
”優先順位を決める”
このキーワードは、あらゆる時間管理の書籍、セミナー、コンサルタントの話に出てくる。聞き飽きた内容だ。ところが一方で、次の内容は初めて知ったことである。
- 管理すべきは「自分1人の仕事のはじめ」と「他人と共同の仕事の終わり」だ
- 実際に企業の現場で指導してきたコンサルタントの言葉には得るものが多い
特に、管理すべき最重要項目が「自分1人の仕事のはじめ」と「他人と共同の仕事の終わり」の2つだけというのは、なるほどと思った次第だ。
目次概略
行本明説+日本タイムマネジメント普及協会著『最強の会議力~ビジネスコミュニケーションの法則50』の目次概略は以下の通り。
- 会議と仕事の「投下時間」と「生産性」を改革する!
- 会議と仕事の「目標」と「やる気」を改革する!
- 「最強の会議力」をつけるために個人と組織がやるべきこと